業務効率化を図るためには、業務削減は必要不可欠です。
しかし、毎日の業務のどこを削減していいかを考えるのはなかなか難しいです。
また、これまで私たちは、業務削減のためにシステム化をしても、うまくいかなかったという中小企業とたくさん出会ってきました。
そこで、私たちが実際に現場で使用している業務削減のテンプレートを全公開します。
業務効率化の専門家がいない中小企業でも実践できるような形式としてこれまでご支援してきたノウハウを詰め込みました。
ポイントは、業務削減の費用対効果を算出していくことです。
この方法を実践することで、むやみに高いシステムをいれてしまって失敗するアナログな業務をどこから改善したらいいかわからないといった状況を脱することが可能です。
お金がかからずできるのでぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
1.業務削減の目的は費用対効果を高めること
中小企業の業務削減は、費用対効果を高めることが重要です。
これまでの企業の歴史の中で培われてきた業務を削減するということは
それだけでそれなりのコスト(労力・手間・時間)がかかることです。
そのため、これから業務削減に取り組む場合は、費用対効果を意識して取り組むといいでしょう。
業務削減の大きなメリットとしてはコスト削減です。
業務削減をすることで、どれだけのコスト削減が見込めて、それをどれほどのコストで実現できるのか?
この目標設定が業務削減のキモとなります。
これから一緒に具体的な業務削減項目と、費用対効果を算出していきましょう。
コスト削減の種類
コスト削減と一口で言っても、いくつか種類があります。業務を削減したらどのコストが削減されるのか考えながら取り組みましょう。
- 時間的コスト:企業活動の上で時間は命です。ムダな業務や、非効率な処理方法を見直し、サービスの磨き上げや顧客対応など、本業に集中できる時間を増やしましょう。
- 金銭的コスト:紙や郵送など、もののやり取りが発生する場合や、人の稼動時間が長くなると、それだけ金銭的なコストが増加します。業務削減することで、利益の増大が見込まれます。
- 心理的コスト:数量では測れないコストが心理的なコストです。アンケートの転記や、単純作業など、従業員の将来に繋がらない業務は、モチベーションの低下を招きます。目に見えませんが、無駄な業務が、心理的な負担を従業員に強いている場合があります。
2.中小企業が取り組むべき業務削減の考え方
業務削減を実現するためには、業務のデジタル化が有効です。
業務削減の考え方と、具体的な削減方法をお伝えしていきます。
デジタル化は、実は3つの段階に大別することができます。
その中でも3段階目のサービスのデジタル化をデジタルトランスフォーメーションと呼びますが、
これからデジタル化に取り組む中小企業では不要です。
デジタルが得意でない中小企業でも、失敗せず業務削減を行いながらデジタル化をするためには、
紙の業務の削減と手作業の削減の2つを進めましょう。
2-1.紙の業務を削減する
中小企業のデジタル化の第一段階は、
社内のデータをアナログデータからデジタルデータに置き換えることです。
つまり、紙管理をやめてデータ化することがデジタル化の第一歩です。
- 紙の契約書をファイルで保管するのではなく、スキャンしてPDFで保管する
- 紙のFAXを印刷せず、電子FAXを使用してPDFで保管する
- 手書きメモを付箋で共有するのではなく、チャットツールを使って電子データで共有する
このように、紙を利用する業務は基本的に業務削減の対象です。
2-2.手作業を削減する
デジタル化の第二段階で重要となるのは、
業務フローをアナログからデジタルに置き換えることです。
つまり、手作業をやめてシステム化することがデジタル化の第二歩目です。
- エクセルにデータを手で打ち込み売上集計する業務を、分析ツールに置き換える
- 紙の請求書を郵送する業務を、請求書システムに置き換える
- 電話で注文を受ける業務を、注文システムに置き換える
このように、手作業は業務削減の対象です。
エクセルのようにパソコンを使っていても手作業ならば業務削減の対象です。
3.業務削減の対象リスト
中小企業の業務削減の対象として以下の2つが削減対象であることをお伝えしました。
- 紙のデータを扱う業務
- 手作業で実施する業務
ただ、これまでの業務をがらりと全て変えるのは難しいです。
そこで、優先して削減すべき業務を以下の3つの観点でピックアップしました。
- 業務削減効果が高い
- 簡単に実施できる
- システム化のコストが低い
ぜひ、自社で削減可能な業務があるか確認してみてください。
3-1.人事・労務関連の業務削減項目
人事・労務分野で業務削減の対象となる業務のリストです。
自社で該当する業務があれば削減の対象としてください。
優先度 | 削減対象業務 | 削減効果 |
高 | 紙での社内通知や告知 | 情報のリアルタイム化・負担軽減 |
高 | メールでの社内通知や告知 | 情報のリアルタイム化・負担軽減 |
高 | 紙での給与明細の発行・配布 | 配布コスト削減 |
中 | 有給休暇のエクセル管理 | 入力ミス防止 |
中 | 給与計算の手作業 | 計算精度向上 |
中 | 紙の休暇・有給申請書の管理 | 申請管理の効率化 |
高 | タイムカードによる勤怠管理 | 正確な勤怠管理・管理コスト削減 |
高 | 残業申請の紙管理 | 申請速度向上 |
高 | 手作業での勤怠データ集計 | 集計工数削減 |
高 | シフトのエクセル管理 | データ管理効率化 |
高 | 出張費の紙精算 | 入力ミス防止・経理処理負担軽減 |
高 | 立替経費の紙精算 | 入力ミス防止・経理処理負担軽減 |
高 | 従業員情報のエクセル手作業と更新作業 | 従業員情報の管理の精度向上 |
高 | 紙の履歴書や職務経歴書の保管・管理 | 保管コスト減少 |
高 | 紙の離職・入職処理 | 従業員情報の管理の精度向上 |
高 | 紙の扶養家族情報の管理 | 従業員情報の管理の精度向上 |
高 | 紙の社員証発行・回収管理 | 管理コスト減少 |
中 | 紙での労働契約書の管理 | 契約書管理が効率化 |
中 | 手作業での年末調整処理 | 調整業務の効率化 |
中 | 人事考課の手作業評価票 | 評価記録・共有効率化 |
中 | 紙での健康診断結果の保管 | 結果の管理・参照が簡素化 |
3-2.会計・経理関連の業務削減項目
会計・経理分野で業務削減の対象となる業務のリストです。
自社で該当する業務があれば削減の対象としてください。
優先度 | 削減対象業務 | 削減効果 |
高 | 手作業での経費精算書の作成 | 経費処理の自動化 |
中 | 手作業での経費集計・計算 | 計算精度向上 |
高 | 紙での原価計算書作成 | 計算精度向上 |
高 | 手作業でのエクセル予算管理 | 管理精度向上 |
高 | 手作業での個別仕訳データ入力 | 会計のリアルタイム化・負担軽減 |
中 | 手作業での通帳情報入力 | 会計のリアルタイム化・負担軽減 |
中 | 紙での帳簿作成 | 会計のリアルタイム化・負担軽減 |
高 | 手作業での資金繰り表の作成 | 資金管理の精度向上 |
中 | 紙での振込依頼書管理 | データ保管の効率化 |
中 | 紙の支払管理表 | 支払手続きが効率化 |
中 | 紙の売掛金の一覧管理 | 資金繰り管理効率化 |
中 | 手作業での資産台帳管理 | 管理とデータ参照が容易 |
中 | 紙の資産台帳管理 | 資産管理効率化 |
中 | 紙の証憑書類管理 | 証憑管理が効率化 |
高 | 手作業での領収書整理 | 整理と検索が容易 |
高 | 紙の請求書・見積書発行・受領 | 手間の削減・発行速度向上 |
高 | 紙での税務申告書類の作成 | 申告業務の効率化 |
3-3.営業・顧客管理関連の業務削減項目
営業・顧客管理分野で業務削減の対象となる業務のリストです。
自社で該当する業務があれば削減の対象としてください。
優先度 | 削減対象業務 | 削減効果 |
高 | 紙の名刺管理 | データ管理効率化 |
高 | 紙の問い合わせ(電話問い合わせ)メモ | データ管理効率化 |
中 | エクセルでのリード管理 | 管理効率化・売上向上 |
高 | 紙の営業議事録管理 | 記録が効率化 |
高 | 紙でのスケジュール管理 | データ管理効率化 |
高 | 手作業でのスケジュール管理 | データ管理効率化 |
中 | 手作業での営業訪問報告書・日報の記入 | 記録が効率化 |
中 | エクセルでの営業案件管理 | 管理効率化・売上向上 |
中 | 紙の提案書の作成・管理 | 手間の削減 |
高 | 手作業での顧客情報分析 | 分析精度向上 |
高 | 紙での顧客情報管理 | 情報の即時検索 |
高 | 契約の更新タイミング管理 | データ管理効率化 |
中 | 手作業での顧客フォローリスト作成 | フォロー効率化 |
中 | 紙での顧客アンケート | レビュー活用効率化・手間の削減 |
高 | 紙の注文書の作成・発行・管理 | データ管理効率化・手間の削減 |
高 | FAXでの注文・管理 | データ管理効率化・クレーム減少 |
中 | 紙の契約書の作成・発行・管理 | 契約締結スピード向上・保管コスト削減 |
4.業務削減の費用対効果を算出する4つの手順
業務削減の対象リストを元に自社の削減対象の業務を選ぶことができましたか?
業務削減をする対象が決まったら次は費用対効果を算出していきます。
イメージとして、最終的には下図のような表を作成していきます。
4-1.業務削減のテンプレートを確認する
業務削減のテンプレートはこちら
Googleスプレッドシートで作成されたテンプレートです。
業務削減の費用対効果をこれから計算する方はぜひ参考にしてみてください。
業務削減テンプレートの内容
テンプレートには必要なタブが4つ入っています。
- 業務削減の対象一覧:業務削減の対象業務のサンプルが入っています。
- 削減対象の業務一覧:自社の削減対象の業務をまとめる一覧
※ご自身の業務に合わせて自由に削減対象を追加してください。 - 作業コストの導出:平均的な1時間あたりの作業コストを計算するシート
- 業務削減効果計算:業務削減の効果が表示されるシート
4-2.削減業務の一覧表を作成する。
削減対象の業務を書き出し、一覧表にまとめます。
グーグルのスプレッドシートを利用すると社内でも共有や編集が簡単なのでおすすめです。
- 削減対象業務を一覧にまとめる
テンプレートを利用する場合は、A列の「削減対象の業務」を入力していきましょう。
別のタブの「業務削減の対象一覧」に本記事の削減リストが記載されているため、参考に、自由に記載していきましょう。数が多いと大変なので最初は1つでも大丈夫です。
- 作業工数を算出する
業務ごとの総工数を計測していきます。
計測と表記していますが、大変になってしまうので、実際に計測する必要はありません。
業務を担当する実際の作業者に体感の工数をヒアリングしていきながら作業工数を明らかにしていきます。
※厳密に行いたい場合は計測してもいいですが、かなり大変です。計算に必要なことは最低限、1回あたりの平均工数と1年間の作業回数です。
年間で1時間以下のタスクは項目として無視してしまって構いません。ヒアリングとしては以下の2つの質問を行います。
・この作業は一回どれくらいかかりますか?
※15分刻みだと15分?30分?1時間?どれくらい?と具体的な単位で聞くと、答えてもらいやすいです。
※場合によってまちまちという答えの場合、平均でどれくらいか聞き取りを行いましょう。
・年間何回くらい作業を行いますか?
※繰り返しの量が多いと答えにくい質問になるため、1日,1週間,1月と期間別にわけてヒアリングするといいでしょう。
- 削減割合を入力する
現状では、それぞれの業務を実質どれだけ削減できるか正確にはわかりませんが、
作業工数の算出の中で、これぐらいは削減できそうという見込みの数字を入力します。
テンプレートではK列「削減割合(%)」です。対象業務の一覧と、総工数の計算ができたら、次のステップに進みます。
4-3.1時間あたりの作業コストを計算する
作業コストを計算するため、基準となる1時間あたりの総コストを導出します。
厳密に分析していくと、アルバイトが作業するのか、社員が作業するのか?
社員の誰が作業をするのか?によって作業コストは変わってきますが、分析が大変になります。
そのため、ざっくり全体の平均の1時間あたりの作業コストを計算していきます。
- 年間の営業時間(勤務時間)を入力する
1年間の勤怠の実稼働時間の合計を出しましょう。
給与データを扱うので、社員同士共有しにくい領域となります。
そのため、一人ずつの時間や給与を出すのではなくて、社員全体・アルバイト全体の時間をそれぞれ調べます。
※社員・アルバイトの時間を分けて計算するのが難しい場合では合算でも可
※勤務時間の目安
正社員一人あたりの勤務時間
365日(年間日数) – 週休2日制の年間休日(104日)- 祝日(10日程度) – 年次有給休暇(10日程度)→ 約240日程度
一般的な1日の労働時間を8時間とすると:240日 × 8時間 = 約1,920時間
仮に月20時間の残業があるとすると:20時間 × 12ヶ月 = 240時間
- 年間の支払項目を入力する
業務の中で、人が稼働すると、給与以外にもさまざまなコストが発生します。
この、間接的なコストも全て含めて、1時間あたりのコストを計算していきます。一人ずつの給与支給額をお互い確認することには問題がある企業がほとんどだと思います。
そのため、決算書を確認して、項目ごとの年間の金額を入力していきましょう。 - 計算で使用する基準コストを確認する
勤怠時間・年間の支払項目を入力すると1時間あたりの作業にかかる総コストが計算できます。
この金額が分析するにあたっての最重要のコストです。1時間あたりの作業コストが計算できました。これで、業務のコストを見積もることが可能となります。
4-4.削減効果を計算する
ここまでまとめてきた情報をもとに、業務削減の見込みの効果を算出します。
業務削減を行うことでどれくらい効果が起こるのかを検証していきましょう。
- 業務削減の費用対効果を計算する
業務削減を行うと、システム化を行うことになります。
その中で、本当にシステムを入れるのか?どれくらいの予算でシステム化をしていけばいいのか?を計算していきます。この費用対効果の算出をしておかないと、望ましくない事態になってしまいます。
高いシステムを入れたけど全然効率化されない
思ったほどの効果が出なかった
システムを入れたけどかえって手間がかかってしまった
また、冒頭で触れた通り、コスト削減には、心理的コストという数値では測れない効果も存在します。
例)業務が削減されることで、従業員の心理的負担が減る
作業が定型化され、引き継ぎが簡単になり、産休・育休がとりやすくなる など
費用対効果を考える際には、こうした副次的な効果も視野に入れましょう。
5.まとめ
中小企業の業務削減についての解説は以上です。
業務削減には専門的な知識が必要になる場合が多いです。
当社では、無料の60分相談も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
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