「ビジネス用語のボトルネックって、どういう意味?」
「ボトルネックがあると、どうなるの?」
「ボトルネックを解消するには、どうすればいい?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
ビジネスのボトルネックとは、業務フローにおいて生産性の低下や停滞が生じている工程や箇所、人のことを意味する用語です。
ボトルネックを放置していると、企業の業績悪化など深刻な弊害が引き起こされます。
そのため、ボトルネックを発見した場合は早急に対処しなければならないのはもちろん、自社の業務にボトルネックが存在していないか、定期的に検証することも重要です。
では、そもそもボトルネックは何が原因で起きるのでしょうか。
また、ボトルネックはどのように特定し、どう改善していけばいいのでしょうか。
この記事では、ビジネスのボトルネックに関する下記のようなポイントについて、詳しくご説明します。
この記事のポイント |
・ ビジネスのボトルネックとは ・ ボトルネックが起きる主な原因5つを解説 ・ ボトルネックが引き起こす弊害を4つの観点から解説 ・ ボトルネック解消に有効なTOC理論を5つのステップに分けて解説 |
この記事を最後までお読みいただければ、ビジネスのボトルネックについて理解を深め、どのような対策が必要なのか、その方針が見えてくるはずです。
目次
1. ビジネスのボトルネックとは
ボトルネックとは、業務やプロジェクトにおいて、生産性の低下や停滞が生じている工程、箇所、人のことをいいます。
どんなに大きなボトルでも、ネック(口の部分)が細いと注げる量が少なくなってしまいます。
ビジネス用語としての「ボトルネック」という言葉は、業務工程に停滞が生じている現象がこの状態に似ていることに由来します。
業務工程においてボトルネックが生じると、業務全体が滞り、企業の業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
【ボトルネックの例】
原因 | ボトルネック(業務工程に停滞が生じている現象) |
人員不足 | 商品の製造工程において、人員が不足している工程の作業が滞る |
アナログな業務が多い | 文書の誤字脱字が多く、その修正に時間を要することで業務が滞る |
承認プロセスが非効率的 | 企画の承認を得るまでに日数を要し、それ以後の仕事を進められない |
※ボトルネックが及ぼす影響については「3. 【要改善】ボトルネックが引き起こす弊害」で詳しく説明していますので、併せてご参照ください。
そのため、業務やプロジェクトの工程にボトルネックがある場合は必ず、これを解消しなければなりません。
2. ボトルネックが起きる原因
ボトルネックが起きる主な原因は、下記の5つです。
ボトルネックは、企業に深刻な悪影響を及ぼすリスクのある危険因子です。
自社にボトルネックが発生していないか、あるいはその兆候がないかどうか考察するためにも、何が原因でボトルネックが起きるのか、一つずつ見ていきましょう。
2-1. 人員不足
ボトルネックが生じる原因としてまず挙げられるのが、人員不足です。
人員不足によって一定人数で業務を遂行すべきところに人員を割り当てられないと、業務の処理能力が低下します。
そして、業務の進行が滞る結果、ボトルネックが発生してしまいます。
■ 人員不足を原因とするボトルネックの例
人員不足を原因とするボトルネックは、様々な場面で生じます。
また、業務の遂行に専門的な知識や技術が必要な場合、これらのスキルをもつ人材の退職によって人員不足状態に陥り、ボトルネックが発生することもあります。
2-2. 業務の属人化
業務の属人化も、ボトルネックの原因になります。
「属人化」とは、ある業務を特定の担当者しかできない、わからない状態に陥っている状況のことをいいます。
業務における作業内容や進捗状況を”特定の担当者”のみが把握し、それ以外の人から見えなくなっていることから、「業務のブラックボックス化」と呼ばれることもあります。
担当者の代替が効かない属人化した業務は、担当者の不在や異動などが原因で、その進行が停滞しがちです。
また、業務が属人化していると作業手順や方法を客観的に検証できないため、作業効率が低下しやすい傾向にあります。
そして、担当者しか遂行できない、あるいは、なにをするにも”その担当者に聞かなければわからない”状態に陥った業務はちょっとしたことが原因で進行が停滞し、ボトルネックが生じてしまいます。
■ 業務の属人化を原因とするボトルネックの例
例えば、販売業において営業担当者は複数人いるものの、見積もり担当者が1人しかいないとします。
このケースでは見積もりを作成できる人が1人しかいないため、この方が家庭の事情で数日間不在になった場合、営業担当者が新規客を開拓しても見積もりを作れません。
見積もりを作れなければ具体的な話を進められませんから、ここで業務が停滞してしまいます(=ボトルネックの発生)。
2-3. アナログな業務が多い
紙や印鑑を使ったアナログな業務の多さも、ボトルネックの原因になります。
文書の手渡しや文書による情報伝達、押印による承認や決済などには、デジタルデータを用いる場合に比べて多くの手間と時間を要します。
また、書類の紛失や誤字脱字などのヒューマンエラーも発生しやすいでしょう。
さらに、アナログな業務はオフィスにいなければできないことが多く、業務の効率化に有益なテレワーク導入の妨げにもなります。
そして、これらの問題が積み重なると業務効率が低下し、ボトルネックが生じてしまいます。
■ アナログな業務の多さを原因とするボトルネックの例
例えば、ある業務における承認や決済を「文書への押印」で行っているとします。
文書への押印は承認者がオフィスに出向いて行わなければなりませんので、この方が病気や出張で不在になった場合、その間は承認や決済が停滞します。
すると、後の工程が進まずその部分がボトルネックになってしまうのです。
2-4. 承認プロセスが非効率的
社内における非効率的な承認プロセスも、ボトルネックの原因になります。
承認プロセスが複雑であったり、重要度の低い業務にまで多くの承認を必要とすると、意思決定が遅れ、業務が停滞する可能性があるのです。
承認をアナログな方法で実施している場合、事態はより深刻でしょう。
もちろん、慎重な判断を要する業務もあるでしょうが、そうでない業務にまで複雑な承認プロセスを用いていると、ボトルネックを生じさせる可能性があります。
■ 非効率的な承認プロセスを原因とするボトルネックの例
例えば、簡単な業務をでも「申請者⇒マネージャー⇒経理⇒責任者」というように3人の承認を要し、しかもその承認を書類に押印する形式で行っているとします。
3段階の承認を、しかも書面で取るとなれば当日中に承認を得ることは難しいでしょうし、3人のうち誰かが出張などで不在だった場合、承認にはさらに多くの日数を要します。
これでは、現場の仕事が全く進みません。
このケースでは複雑かつ非効率的な承認プロセスが、ボトルネックになっていると言えます。
2-5. コミュニケーション不足
社内のコミュニケーション不足も、ボトルネックの原因になります。
チーム内や部署間において上手くコミュニケーションをとれていないと、意思統一ができなかったり予期せぬ誤解や問題、不和を引き起こし、業務が停滞する可能性があります。
■ コミュニケーション不足を原因とするボトルネックの例
同じチーム内で、オフィスに出社するスタッフとリモートワークをするスタッフが混在しているとします。
このチームにおいて業務内容の変更を、オフィスに出社しているスタッフに口頭で伝え、リモートワーク中の社員には伝えていなかった場合、ミスが起きやすくなり、業務が滞る可能性があるでしょう(=ボトルネックの発生)。
近年はリモートワークを導入する企業が増加傾向にありますが、出社スタッフと在宅スタッフ間のコミュニケーション不足には、特に注意しなければなりません。
3. 【要改善】ボトルネックが引き起こす弊害
ボトルネックの存在は、企業にとって大きなマイナスとなる、下記のような弊害を引き起こすリスクがあります。
ここでは、ボトルネックが企業にとっていかに深刻な問題なのか、放置すると何が良くないのか、4つの観点からご説明します。
3-1. 生産性の低下
ボトルネックは、生産性の低下を招きます。
例えば、企業がある製品を製造する工程の一部分にボトルネックが生じているとします。
製造工程が停滞すると、その後の工程を進められないのはもちろん、その前の工程も、停滞している部分のスピードに合わせて仕事をするしかありません。
自分達だけがスピーディーに作業を進めても、その後の工程が詰まっていると、成果物を送り出せないからです。
製造工程は連続性のある”一つひとつの作業工程の集まり”ですので、その工程のたった一部分にでもボトルネックが生じると、全体の生産性が低下してしまうのです。
3-2. コストの増大
ボトルネックの存在は、コストの増大を招くリスクもあります。
例えば、人員不足が原因でボトルネックが生じている場合、手っ取り早くこれを解消するには追加の人員やリソースの割り当てが効果的です。
ただし、そのためには人件費をはじめとする様々な経費が発生します。
これは、ボトルネックさえ発生していなければ支出する必要のないコストですので、企業にとっては大きな負担になるでしょう。
3-3. 時間の浪費
ボトルネックの放置は、時間の浪費につながります。
例えば、アナログな方法を用いた非効率的な承認プロセスがボトルネックとなっている場合、承認を得て業務に取り掛かるまでに数日かかるケースもあります。
ボトルネックを解消してスピーディーな承認さえできれば、もっと早く業務を始められるはずです。
承認待ちで業務が滞っている状態は、時間の浪費に他なりません。
製造工程におけるボトルネック発生によって生産性が低下しているケースでも、全体の工程が遅延して、時間を浪費することになるでしょう。
このようにボトルネックは、生産性の低下やコストの増大だけでなく、時間の浪費をも引き起こしてしまいます。
3-4. 顧客の喪失・業績の悪化
ボトルネックを放置すると、顧客の喪失や業績の悪化を招く恐れもあります。
ここまでご説明してきたように、ボトルネックは生産性の低下や時間の浪費につながります。
例えば、製造工程にボトルネックが生じた場合、本来ならば1週間で完成する商品の製造に2週間以上の時間を要してしまう、といった可能性もあるでしょう。
そして、これが原因で納期を守れなかったり、納品した商品に不具合があったりすると、企業の信頼が低下し、最悪の場合は顧客を失ってしまいます。
顧客の喪失は売上げの低下に直結しますので、業績が急激に悪化する可能性も十分考えられます。
このようにボトルネックの存在は、企業の存続をも左右しかねない、非常に大きなリスクとなる可能性があるのです。
4. ボトルネック解消に不可欠なTOCとは~5つの基本ステップ~
ボトルネックを発見した場合はもちろん、「もしかしたら自社にもボトルネックがあるのかもしれない」と感じたときは、早急に対処しなければなりません。
そこでご紹介したいのが「TOC」理論です。
TOCとは「Theory Of Constraints」の略で、「業務の流れにおける制約条件(=ボトルネック)を解消すれば、全体のパフォーマンスを最適化できる」というマネジメント手法のことをいいます。
TOC理論を活用したボトルネックの解消は、下記5つの手順で実践します。
ここでは、ボトルネックを解消するには具体的にどうすればいいのか、具体例を挙げつつご説明します。
4-1. 【STEP1】ボトルネックを特定する
ボトルネックを解消するにはまず、なにがボトルネックになっているのか特定する必要があります。
業務全体の流れを整理し、各工程を分析したうえで、最も業務が滞っている工程を特定しましょう。
ボトルネックと疑われる工程が複数ある場合は、その重要度を明確化し、重要度の高いボトルネックから対処します。
ただ、企業によっては、「仕事量が多い」「工程が多い」「同時進行しているプロジェクトがある」といった理由から、ボトルネックの発見が困難なケースもあるでしょう。
そういった場合は、優先順位の低い業務を一旦ストップしたり、工程を減らしたりして環境をシンプルに整理することで、ボトルネックを発見しやすくなります。
※ボトルネックが明らかにわかっている場合は、そのまま次のステップへ進んでください。
■ 具体例
例えば、[企画]⇒[承認]⇒[プロジェクトの実行]という流れで業務を進めている企業があるとします。
この各工程を検証したとき、[承認]の工程が滞っている場合、この部分がボトルネックであると特定します。
4-2. 【STEP2】ボトルネックをフル活用する
ボトルネックを発見したら、まずはその部分をフル活用します。
不必要な工程はないか、その工程に関わるスタッフの中で稼働が止まっている人はいないか、どのような不具合が発生しているのか、といった点について検証し、生産性が向上する方法を実践していきます。
ここで一つ注意していただきたいのは、STEP2で行う「ボトルネックのフル活用」は、新たな人員やシステムを導入することではない、という点です。
この工程ではあくまで、現状の人員やシステム、設備のままで最大限のパフォーマンスを引き出す方法を模索します。
■ 具体例
例えば、「承認プロセスが多い」ことがボトルネックになっているとします。
簡単な業務でも[申請者]⇒[マネージャー]⇒[経理担当者]⇒[責任者]というように3人の商品を経なければならないと、承認に時間がかかってしまいますよね。
こういったケースでは、マネージャーに一定の権限を与え、「重要度の低い業務についてはマネージャーの承認のみでOK」とする手法が有効です。
承認プロセスをシンプルにして承認に時間がかからなくなると、ボトルネックとなっていた部分の生産性がUPするでしょう(=ボトルネックのフル活用に成功)。
4-3. 【STEP3】ボトルネック以外をボトルネックに合わせる
ボトルネックをフル活用できるようになったら、一旦、ボトルネック以外のパフォーマンスをボトルネックに合わせます。
ボトルネックの解消を焦らず、まずはボトルネックに合わせて他の工程を調整しましょう。
仮に、ボトルネック以外の工程の生産性が高くても、このステップではあえて、ボトルネックに合わせて他の工程の稼働率を下げます。
生産性の高い工程をあえてボトルネックに合わせることにより、業務全体のバランスを図ることが重要です。
■ 具体例
例えば、ある企業におけるプロジェクトにおいて、① 製造、② 検品、③ 出荷、という3つの工程があり、非効率な承認プロセスが原因で工程①にボトルネックが生じているとします。
このケースでは、検品と出荷のスピードを緩めるなど、承認にかかる時間を見込んで他の工程を調整することで、業務全体のバランスを図ります。
4-4. 【STEP4】ボトルネックの能力を向上させる
STEP1~STEP3のステップを経て、ここで初めてボトルネックの能力向上に取り組みます。
STEP4では、コストがかかる方法を含め、ボトルネックを改善する対策を実践します。
例えば、下記のような対策が有効でしょう。
ボトルネックを改善する方法 |
・ 新たな設備やシステムを導入する ・ 有能な人材を雇用する ・ STEP3で業務を調整した際に余裕が生まれた人員や設備をボトルネックとなっている工程に充てる |
ボトルネックの処理能力が高まれば、業務全体の生産性UPを期待できます。
■ 具体例
STEP2~STEP3で挙げた例のように、非効率な承認プロセスが原因でボトルネックが生じている場合、新たな人材をマネージャーとして雇用します。
マネージャーが増えると、承認にかかる時間を短縮できますし、有能な人材を雇用してマネージャーが承認できる業務を増やせば、業務効率はさらにUPします。
また、一連の承認プロセスを紙と押印によるアナログな手法で行っている場合、これをデジタル化する対策も効果的です。
承認プロセスをデジタル化すれば、申請内容をすぐに確認できるうえ、承認者が出張などでオフィスにいなくても承認手続きを進められるからです。
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4-5. 【STEP5】STEP1~STEP4を繰り返す
STEP1~STEP4によってボトルネックを解消できたら、再度STEP1に戻り、業務全体を見直します。
そして、STEP1~STEP4を繰り返し行いましょう。
ひとつのボトルネックを解消したからといって、業務全体を「最適化」できたとは判断できません。
ワークフローを再度見直せば、新たなボトルネックが見つかるはずです。
あるいは、ボトルネックを解消したことによって、新たにボトルネックとなる工程が生まれることもあるでしょう。
STEP5では、STEP1~STEP4を繰り返すことにより、次なるボトルネックの解消に取り組みます。
STEP1でボトルネックが複数見つかった企業は、次に重要度の高いボトルネックの解消に取り組むといいでしょう。
ボトルネックは、「ひとつ解消して成果を確認できたら終了」ではありません。
企業として成長していくには、ボトルネックの発見~解消を継続して行うことが大切なのです。
5. アナログな業務がボトルネックになっているならデジタル化を検討しよう!
ボトルネックの解消に有効な手法のひとつが、業務のデジタル化です。
「2-3. アナログな業務が多い」でご説明したように紙と印鑑を使ったアナログな業務には時間を要しますし、ヒューマンエラーが発生しやすい傾向にあります。
また、情報伝達をアナログな方法で行っていると、「2-5. コミュニケーション不足」でご説明したような状態に陥るリスクもあります。
この点、業務をデジタル化すれば業務にかかる時間を短縮できますし、文書の紛失をはじめとするヒューマンエラーも起こりにくくなります。
また、情報伝達や連絡方法をデジタル化すれば、出社スタッフ・在宅スタッフ間のコミュニケーション不足も解消できるでしょう。
現在、自社のボトルネックにお悩みの方は業務のデジタル化を検討してみてはいかがでしょうか
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スクラム29.8では選任コンサルタントによる60分間の無料相談を実施していますので、まずは気軽にご連絡ください。
「業務のデジタル化って、何から始めればいいの?」
「パソコン操作に疎い社員が多くても、業務のデジタル化は可能?」
など、どのような内容でもOKです。
ボトルネック解消に向けて業務をデジタル化する方法を一緒に考え、ご提案いたします。
まとめ
ビジネスのボトルネックとは、業務において生産性の低下や作業の停滞などが生じている箇所のことをいいます。
ボトルネックが発生する主な原因は、以下の5つです。
これらの原因によって起きたボトルネックを放置していると、生産性が低下するのはもちろん、余分なコストが増大したり、時間を浪費したり、果ては顧客を喪失して業績が悪化したり、というように様々な弊害が引き起こされます。
そのため、ボトルネックが発生している場合や、ボトルネックの原因となり得る問題を抱えている場合は、速やかに解消していかなければなりません。
ボトルネックの解消には、TOC理論によるマネジメント手法が有効です。
ボトルネックを解消できれば、企業の生産性が向上し、業績UPも期待できるでしょう。
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