業務の棚卸をしたいけどどこからはじめたらいいか悩んでいませんか?
業務効率化を図るためには、業務の棚卸は必要不可欠です。
業務の棚卸をしておかないと、お金をかけて業務効率化のプロジェクトを進めたのに、思ったような効果が上がらなかったということにもなりかねません。
そこで、私たちが実際に現場で使用している業務の棚卸のフレームワークを全公開します。
業務効率化の専門家がいない中小企業でも実践できるような形式として、これまでご支援してきたノウハウを詰め込みました。
ポイントは、業務の流れとコストを明確化していくことです。
この方法を実践することで、むやみに高いシステムをいれてしまって失敗するアナログな業務をどこから改善したらいいかわからないといった状況を脱することが可能です。
しっかり実践すれば、すぐに10〜15%ほどの作業工数を削ることも可能となります。
これは、20人採用している会社であれば、年間1,000万円〜1,500万円ほどです。
業務の棚卸は自社で実施でき、お金がかからずできるのでぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
1.業務の棚卸について
業務の棚卸とは、現状の業務の流れとかかった時間を見える化することです。
業務の効率化・社内のシステム化を考えている中小企業は最初に必ず業務の棚卸を実施してください。
これは、業務の棚卸が完成していない状態では、課題感が明確でなく、業務改善がうまく行かない場合が多いからです。
業務の棚卸には色々な方法がありますが、当社の中小企業に特化した業務コンサルティングの実績からおすすめする業務の棚卸の方法をご紹介します。
当社では、業務の棚卸にあたって以下の2つの作業を行うことを推奨しています。
※「2.業務別工数分析」は作業の難易度が高いため、専門家のサポートが必要な場合があります。
- 業務フロー(業務の流れ)を書き出す
業務間の関係性を洗い出し、会社全体の業務の流れを明確にする - 業務別工数を分析する
業務別の工数(かかった時間)を分析し、改善の優先度と業務の割合を把握する
現状の業務の流れとかかった時間を見える化する理由
- 課題が明確になる
業務を効率化するためには、業務のムダを発生させている原因を特定する必要があります。
無駄を特定するためには、業務の前後関係を把握する必要があります。
業務フローの書き出しを行うと、業務同士のつながりと関係性が明らかになるため、業務改善のための課題が明確となります。 - システム投資の判断指標になる
中小企業のデジタル化が失敗する大きな理由として、システム導入の投資計画が明確ではないことがあります。
そうすると、「システムを入れたのはいいけど使っていない」「せっかくシステム化したのに、かえって手間が増えてしまった」といった事態になりがちです。こうした事態を避けるために、業務の棚卸を実施し、以下のようなことを想定しながら、システム投資の判断指標としましょう。
・業務フローを明らかにすることで新しいシステムを導入したら業務フローはどのように変化するのか?
・業務工数分析をすることで、どのようなリターン(削減効果・売上増・働き方改善など)が見込めるのか? - 教育・引き継ぎが簡単になる
業務フローがわからないと、業務が特定の担当者に依存する属人化が発生しやすくなります。
属人化している状態では、業務を行なっている本人も、その業務をこれから学ぶ他の社員も業務の理解や実践が難しくなります。
しかし、業務フローの明確化を行うと、業務のどの部分から教えていけばいいか明確になるため、教育・引き継ぎが簡単になります。
また、作業工数が明らかになることで、今後の採用計画や人事の計画を立てやすくなります。
2.業務フローを書き出す方法
会社全体の業務を川の流れ(フロー)のように見立てて、上流(最初の顧客接点)から下流(入金確認・会計入力)までの流れを明確化することを業務フローの書き出しと呼びます。
業務フローの書き出しの目的は業務間の関係性を洗い出し、会社全体の業務の流れを明確にすることです。
この章では、業務フローの書き出し方を解説していきます。
業務の棚卸というと、業務を箇条書きで書き出すことが一般的ですが、
この方式で書き出すと、業務同士のつながりがわからず、改善点を明確にすることが難しくなります。
そのため、業務同士の関係性と流れがわかるように書き出していきましょう。
川の流れも、上流がせき止められてしまうと、下流の水は減ってしまいます。業務フローも同様で、業務の上流(前工程)は業務の下流(後工程)に影響を及ぼします。業務同士は繋がって存在するため、前後関係が重要なのです。
業務フローの書き出し3つのポイント
業務フローの書き出しを進める上で、全体的なポイントは以下の3つです。
- 時間を決めてできるところまで、無理なく実施しましょう。
作業時間の目安は、売上10~30億円の事業を1つ行うのに、8~10時間ほどです。
最初からいきなり全部やろうとすると、頓挫する場合が多いです。
1回30分でもいいので、時間を決めて、無理なく進めていきましょう。 - 業務を書き出すことだけに集中して取り組みましょう
業務の棚卸が目的なので、業務の流れを書き出すことに集中しましょう。
解決策の議論や削減する業務の策定は次のステップで行うので、話が脱線しないように意識してください。 - 大まかに全体感を捉えましょう
この業務の棚卸で必要なことは、全体的な業務の流れを把握し、課題を明らかにすることです。80%以上の確率で発生するものはモレなく書き出し、年間で数件しか発生しないような例外は無視して構いません。業務フローは、事業によって異なりますが、スタートとゴールは共通しています。
スタート:最初の顧客からの問い合わせ(メール・電話・FAX・紹介など)
ゴール :入金(現金・振込・カードなど)と会計入力
スタートから順番に、業務の流れを書き出していきましょう。
2-1.業務フローを書き出すツールを用意する
詳細はお見せできませんが、業務フローを書き出した時の全体の図です。
最終的には、業務フローは横にどんどん長くなっていきます。
業務が複雑であればあるほど長くなっていきます。
ホワイトボードや模造紙、付箋など書き出しやすいものを準備しましょう。
パソコン作業になれていて、Web上でまとめたいなら、
lucid chartは無料で使え、操作もしやすいため便利です。
(https://www.lucidchart.com/pages/ja)
2-2.作業者を2人以上集める
業務フローを書き出す作業は必ず2人以上でやりましょう。
- ヒアリングして業務フローを書く人
- 業務フローの内容を話す人
業務フローに一番詳しい人に業務の流れを話してもらいながら、
ヒアリングする人は、図にまとめていきましょう。
2-3.業務フローを記述する
フローチャートの記述方法には様々なものがありますが、覚えていると大変です。
四角と矢印だけを使って、順番と流れを意識しながら書いていきましょう。
以下が、顧客からの問い合わせを共有するまでの業務フローを書き出した場合の例です。
まずは、このようにシンプルに業務フローを書き出してみましょう。
2-4.業務フローに詳細のメモを追加する
業務フローの流れを書き出したら、より詳細な情報を図に書き込んでいきましょう。
業務フローの書き出し、確認したい5W1H
これらを全て網羅している必要は必ずしもありません。
しかし、業務フローをもれなく詳細に把握するための一つの考え方として、ご活用ください。
- Who:誰が業務を行っているのか?
→その人にしかできないのか?業務改善を行うときに誰に協力してもらうか?がわかる - Why:なぜその業務をやっているのか?
→その業務が必要なのか?業務を変更した後どのような影響が起こるのか?がわかる - Where:どこで行われているのか?(本店・支店・リモート・現場など)
→そこでやる必要はなにか?リモートにしてよいのか?などシステム化の要件がわかる - When:業務のタイミングや頻度(毎日、毎週、毎月、毎年など)
→どれくらいコストが掛かっているのか?業務のボリュームがどれくらいか?がわかる - How:定型業務か、非定型業務か?
どのような方法で具体的におこなわれているのか?がわかる
書き出した業務フローに付け足して詳細を把握できるようにしていきましょう。
一度、全体像さえ書き出してしまっていれば、詳細を後から付け足すのは簡単です。
3.業務別工数分析の方法
2-1.業務フローの書き方が完了したら、業務別の工数(作業時間)の分析を行います。
業務を大きな業務プロセス(大項目)とその業務プロセスの中の分類(中項目)に整理をして、業務プロセスごとの作業工数を分析できる表を作成することを業務別工数分析と呼びます。
業務別構成分析の目的は、業務ごとの工数を分析し、改善ポイントを明確にすることです。
この章では、業務別工数分析の方法を解説していきます。
イメージとして、最終的には、下図のような表を作成していきます。
3-1.業務別工数分析のテンプレートを確認する
業務別工数テンプレートはこちら
Googleスプレッドシートで作成されたテンプレートです。
業務別工数分析をこれから行う方はぜひ参考にしてみてください。
業務別工数テンプレートの内容
テンプレートには分析に必要なタブが6つ入っています。
- 業務の一覧表:業務フローで書き出した業務を全て入力するシート
- 大項目:業務を分類する大項目を設定するシート
※ご自身の業務に合わせて区分は自由に設定してください。 - 中項目:業務を分類する中項目を設定するシート
※ご自身の業務に合わせて区分は自由に設定してください。 - 作業コストの導出:平均的な1時間あたりの作業コストを計算するシート
- 大項目分析:業務の大項目別の作業工数とコストがわかるシート
- 中項目分析:業務の中項目別の作業工数とコストがわかるシート
3-2.業務の一覧表を作成する
業務フローの書き出しで、書き出した業務を一覧表にまとめます。
グーグルのスプレッドシートを利用すると社内でも共有や編集が簡単なのでおすすめです。
テンプレートを利用する場合は、C列の「業務フロー項目」に業務を入力していきましょう。
書き出しの段階では、業務の分類(大項目・中項目)は無視して構いません。
- 業務フロー項目と備考・詳細を書き込む
業務フローで書き出したプロセスごとに業務を書き出していきます。
このとき、同じ種類の業務で判別がつきにくい時は備考・詳細にメモを残していきます - 作業工数を算出する
業務ごとの総工数を計測していきます。
計測と表記していますが、大変になってしまうので、実際に計測する必要はありません。
業務を担当する実際の作業者に体感の工数をヒアリングしていきながら作業工数を明らかにしていきます。
※厳密に行いたい場合は計測してもいいですが、かなり大変です。計算に必要なことは最低限、1回あたりの平均工数と1年間の作業回数です。
年間で1時間以下のタスクは項目として無視してしまって構いません。ヒアリングとしては以下の2つの質問を行います。
・この作業は一回どれくらいかかりますか?
※15分刻みだと15分?30分?1時間?どれくらい?と具体的な単位で聞くと、答えてもらいやすいです。
※場合によってまちまちという答えの場合、平均でどれくらいか聞き取りを行いましょう。
・年間何回くらい作業を行いますか?
※繰り返しの量が多いと答えにくい質問になるため、1日,1週間,1月と期間別にわけてヒアリングするといいでしょう。
3-3.業務を大項目と中項目に分類する
- 業務一覧に書き出した項目を分類する
業務別工数分析では、どのカテゴリーの業務にどれだけコストが掛かっているかを可視化することを目的としています。
そのため、自社の業務実態にあった項目を設定し、業務を分類していきます。
このとき、業務の一覧を大項目・中項目の項目の2つに分類します。 - 大項目を設定する
自社の工程を大まかに分類していきます。
自社の組織体制や、業務体制に沿ったカテゴリーを設定します。
- 中項目を設定する
各大項目を3〜7個ほどのカテゴリーに分類していきます。3-4.1時間あたりの作業コストを計算する
作業コストを計算するため、基準となる1時間あたりの総コストを導出します。
厳密に分析していくと、アルバイトが作業するのか、社員が作業するのか?
社員の誰が作業をするのか?によって作業コストは変わってきますが、分析が大変になります。
そのため、ざっくり全体の平均の1時間あたりの作業コストを計算していきます。 - 年間の営業時間(勤務時間)を入力する
1年間の勤怠の実稼働時間の合計を出しましょう。
給与データを扱うので、社員同士共有しにくい領域となります。
そのため、一人ずつの時間や給与を出すのではなくて、社員全体・アルバイト全体の時間をそれぞれ調べます。
※社員・アルバイトの時間を分けて計算するのが難しい場合では合算でも可
入力後は、業務一覧の年間の総工数と勤務時間にずれがないか確認してください。
ずれがあるようであれば、調整をしてください。
※勤務時間の目安
正社員一人あたりの勤務時間
365日(年間日数) – 週休2日制の年間休日(104日)- 祝日(10日程度) – 年次有給休暇(10日程度)→ 約240日程度
一般的な1日の労働時間を8時間とすると:240日 × 8時間 = 約1,920時間
仮に月20時間の残業があるとすると:20時間 × 12ヶ月 = 240時間
- 年間の支払項目を入力する
業務の中で、人が稼働すると、給与以外にもさまざまなコストが発生します。
この、間接的なコストも全て含めて、1時間あたりのコストを計算していきます。一人ずつの給与支給額をお互い確認することには問題がある企業がほとんどだと思います。
そのため、決算書を確認して、項目ごとの年間の金額を入力していきましょう。
- 計算で使用する基準コストを確認する
勤怠時間・年間の支払項目を入力すると1時間あたりの作業にかかる総コストが計算できます。
この金額が分析するにあたっての最重要のコストです。
この金額がわかると、今後の業務改善を行う際、投資の判断がしやすくなります。
3-5.業務工数分析を行う
これまで棚卸を進めてきた業務の情報をもとに、業務プロセスごとの時間・コストを分析します。
自社の業務プロセスごとの実態が表現されているかを確認しながら、
業務の改善点を確認していきましょう。
業務別工数分析の2つのポイント
工数がよりかかっている大項目に着目してみましょう。
どの業務項目の工数を削減することでどれだけコストが削減できるか、想定することができます。
棚卸をしたら、次は、システム化・業務効率化を進めていくことになります。
業務別工数分析を行うことで、各業務項目を改善するとどれくらいのリターン(利益)が得られるかがわかるため、投資対効果を想定することができます。
ただし、業務効率化の効果はただ時間だけでは測れない副次的な効果も発生します。
例)業務が削減されることで、従業員の心理的負担が減る
作業が定型化され、引き継ぎが簡単になり、産休・育休がとりやすくなる など
費用対効果を考える際は、こうした副次的な効果も視野に入れましょう。
4.まとめ
中小企業の業務の棚卸についての解説は以上です。
業務の棚卸には専門的な知識が必要になる場合が多いです。
当社では、無料の60分相談も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
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