【実践的】経理業務効率化の11の方法|削減効果や難易度まで解説

「経理業務の効率化ってどのようなことができるだろうか?」
「網羅的にアイデアを知った上で、自社でも取り組める方法を選びたい」

という企業担当者は多いのではないでしょうか。

経営業務を効率化する方法は多岐に渡り、すぐに取り組めるものから、社内体制の整備が必要なもの、システム導入を必要とするものまでさまざまあります

この記事では、

(1)すぐに取り組める内容(ITツール導入が必要ないもの)
(2)ITツールを活用した方法

の2つの方向性に分けて、効率化方法を解説していきます。

経理業務が効率化できていない現状は、企業によって異なります。また、企業規模や業態、仕事内容によって、工数削減効果が高いものも低いものもあります

まずは今回の記事で「どのような方法が選択肢としてあるのか」を理解した上で、自社で採用すると効果が高いものはどれかを考えていきましょう。

ぜひ、それぞれの方法について、自社で採用するとどの程度の効率化ができるかイメージしながら読み進めてみてください。

目次

1. 経理業務を効率化する11の方法【すぐに取り組める内容】

経理業務を効率化する方法には、「今すぐ着手できること」と「ITツールを導入する方法」の2つの方向性があります。このうち後者の方法は、効率化の効果は大きいものの、時間も予算もかかる内容となります。

まずは、今すぐ着手できるアプローチ方法を11つ紹介していきます。

【すぐできる経理業務の効率化】

効率化の方法取り組みやすさ工数削減効果
経理業務マニュアルやテンプレートを作る★★★★★★★★☆☆
振込業務や決済業務をオンラインで行う★★★★★★★☆☆☆
ChatGPTなどの生成AIを活用する★★★★☆★★☆☆☆
請求書など書類のフォーマットを統一する★★★★☆★★☆☆☆
業務フローをシンプルにする★★★☆☆★★★★☆
承認フローを見直す★★★☆☆★★★★☆
郵送業務を効率化する★★★☆☆★★★☆☆
印刷・封入・発送業務を見直す★★☆☆☆★★★★★
現金のやりとりのキャッシュレス化を進める★★☆☆☆★★★★☆
小口現金を廃止して別の決済方法を採用する★★☆☆☆★★★★☆
「ECRS」に沿って業務を統合・削減する★★★★★★★★☆☆

それぞれについて、詳細な方法や「取り組みやすさ」、「工数削減効果」について解説していきます。

1-1. 経理業務マニュアルやテンプレートを作る

取り組みやすさ工数削減効果
★★★★★★★★☆☆

経理業務を効率化する方法として、業務を簡素化することはとても大切です。具体的には、経理業務マニュアルやテンプレートを作成して、迷わず簡単に経理業務を進められるようにします。

例えば、「いつも手順を間違ってしまい時間がかかってしまう」という場合には、その手順を書いて貼りだしておくだけでも間違えずに早く正しく業務が進むはずです。また、苦手な作業がある場合には、その作業が得意な経理担当にコツを聞いて、マニュアル化しておくと苦手な担当者もスムーズに進められるはずです。

また、エクセルなどの表計算ソフトで関数を入れたテンプレートを作っておけば、毎回計算しなくて良いため業務が早く終わります。さらに、自動計算なのでミスも減るメリットもあります。

エクセルが得意な社員がテンプレートを作成しても良いですし、インターネットでダウンロードできる関数を活用するのも良いでしょう。

1-2. 振込業務や決済業務をオンラインで行う

取り組みやすさ工数削減効果
★★★★★★★☆☆☆

取引先への振込業務をオンラインで行うことも、経理業務の効率化につながります。

金銭のやり取りはとても重要な業務ですが、わざわざ銀行まで出向いて振込や記帳をするのは時間も手間もかかります。インターネットバンキングを活用すれば、銀行に直接出向くことなくパソコンやスマホで振込業務を終えることができます。

1-3. ChatGPTなどの生成AIを活用する

取り組みやすさ工数削減効果
★★★★☆★★☆☆☆

昨今はさまざまなAIサービスが登場しており、こうしたAIサービスを経理業務の一部で活用することで、効率化を図れます。

経理に特化したAIサービスのような大規模なものではなく、登録すれば無償で誰でも使える「ChatGPT」を利用するだけでも効果的です。

経理業務でのChatGPTの活用例
・数字の合計額が合わない場合などに、ChatGPTに間違っている箇所を指摘してもらう
・インボイス制度についての社内案内を作る際に、原稿案の作成や添削、改稿をしてもらう
・Excelの関数やマクロ(VBA)の作成方法をChatGPTに教えてもらう

こうした生成AIに苦手意識を持たず、いろいろと試行錯誤してみて、「この場合にはこのプロンプト(指示文)を使うと良いよ」など社内で知見・ノウハウを貯めていきましょう。

ChatGPTで社内文書の文案を作る例
ChatGPTを開いて、以下の文章を入力するだけで、文案を提案してくれます。

「あなたは会社の経理担当です。インボイス制度について下記内容を社内リリースするにあたり、より分かりやすく内容を書き換えてください。

◯◯◯(ブラッシュアップしたい文章)」

※生成AIを活用する際には、入力した情報がAIモデルの学習に活用されてしまう可能性があるため、大切な顧客情報や機密情報などは入力しないようにしましょう。

1-4. 請求書など書類のフォーマットを統一する

取り組みやすさ工数削減効果
★★★★☆★★☆☆☆

経理業務に使う書類のフォーマットを統一することも、業務効率化につながるポイントです。

例えば、客先から送られてくる請求書のフォーマットが決まっておらずバラバラだと、同じ項目でも記載されている場所や名称が違うため、確認・入力に時間がかかります。違う項目に入力してしまうなどのミスが発生する可能性も高まります。

また、必要な情報が書かれている項目が無いなど記載漏れがあった場合には、担当者に詳細を確認し、担当者から客先に確認してもらうなどの差し戻しの作業も発生してしまいます。

フォーマットを統一すれば、迷うことなく、経理業務をスムーズに進めることができるようになります。できれば、請求書の受領方法も統一する(メールなど)と、さらに効率化できるでしょう。

1-5. 業務フローをシンプルにする(経費精算の回数を減らすなど)

取り組みやすさ工数削減効果
★★★☆☆★★★★☆

経理業務の効率化のうちすぐ取り組める方法として、「業務フローそのものを見直してみる」という視点も大切です。業務フローをシンプルにするだけで、業務効率化を図れるケースはたくさんあります。

例えば、「交通費などのレシートを都度入力している」とします。この場合、業務フローを見直して「都度ではなく月末にまとめて清算」とするだけで、業務効率化できる可能性があります。

前者の業務フローだと、社員からレシートを渡された時点で、その時に行っていた業務を中断して入力をするため、非効率になる可能性があります。これをまとめて入力するだけで、効率化できるでしょう。

※ただし、後者のフローにすると「月末に業務が集中する」など他の問題が発生する可能性もあるので、社内でどの業務フローが最適なのかを議論する必要はあります。

大切なのは、「現在当たり前になっている業務フローの中で非効率なフローは無いか」を考えてみて、改善できるポイントは業務フローを変えていくというアプローチです。

1-6. 承認フローを見直す

取り組みやすさ工数削減効果
★★★☆☆★★★★☆

1-5とも関連しますが、承認フローを見直すのも経理業務の効率化につながります。

経理だけでは「その経費を承認するかどうか」を判断できない場合、経理担当者から経理部長、総務部門の部門長の承認が必要なケースがあります。承認フローが複雑になれば、承認が出るまでは経費の処理ができないなど、業務が遅れる原因となりかねません。

承認フローを見直して、承認されるまでの期間を短縮することで、業務効率化につながります。

例えば「承認できる条件(項目・上限価格など)」をあらかじめ細かく設定しておき、経理担当者または経理部長の判断で進められるようにするなどの方法があります。

1-7. 郵送業務を効率化する(郵便料金計器・料金後納サービス)

取り組みやすさ工数削減効果
★★★☆☆★★★☆☆

郵便物に関わる経理を効率化するために、郵便料金計器と料金後納サービスを導入するという方法もあります。

郵便料金計器とは、郵便物のサイズや重さに応じて料金を算出して、ラベルを印字してくれる機械です。ラベル印字まで対応する機械だと数十万円以上しますが、リースなどでの導入も可能です。

郵便局の料金後納サービスとは、1カ月あたり50通以上の郵便物・荷物を出す場合に、郵便局の承認を受けて、料金を1カ月まとめて翌日に支払うことができるサービスのことです。

郵便料金計器と料金後納サービスを導入するメリットは、以下です。

・郵便局に行かなくても、郵便料金計器で瞬時に郵便料金が分かる
・切手代わりに郵便料金スタンプをプリントできるため、切手の管理が不要になる
・郵便料金計器の機能で、使用料金をデータ化して保存できる
日本郵便指定の郵便料金計器を使用すれば、郵便局に持ち込まなくてもそのままポストへ投函可能

料金後納サービスについては「郵便局の公式ホームページ>料金後納」で最新の情報をご確認ください。

このように、郵便料金計器と料金後納サービスを組み合わせることで、郵便物に関わる業務を大幅に効率化することができます。

1-8. 印刷・封入・発送業務を見直す(機械・アウトソース・デジタル化)

取り組みやすさ工数削減効果
★★☆☆☆★★★★★

取引先への納品書や請求書などを封書で行っている場合には、それらの印刷・封入・発送業務を見直すことが大幅な業務効率化につながります。

(1)機械化

封入封緘機(インサーター)を導入することで、書類を折る・封入する・封緘する(糊付けする)までを自動化できます。大量に封入作業があって、この作業にかなりの時間がかかっている場合には導入をおすすめします。

(2)アウトソース

請求書の発行業務自体をアウトソース(外注)することで、社内での請求書発行業務をなくすことができます。

(3)デジタル化

デジタル化は、請求書などを紙で発行することをやめて、PDF化したデータをメールで送信したりサイトからダウンロードしたりできるようにすることをいいます。

デジタル化すれば、印刷業務から封入、発送まで全て必要なくなるため、郵便代のコストもカットできるメリットがあります。取引先との関係もありますが、「そもそも紙での発行は必要なのか」検討してみると良いでしょう。

1-9. 現金のやりとりのキャッシュレス化を進める

取り組みやすさ工数削減効果
★★☆☆☆★★★★☆

経費清算のほとんどが現金である場合に、できるだけキャッシュレス化することで、業務を効率化できます。

キャッシュレス化とは、現金を使用しない決済方法に変えることで、クレジットカードやデビットカード、電子マネー、スマートフォン決済などを使うことをいいます。

現金でのやり取りでは、領収書の金額の間違いや現金残高の過不足が発生するなどミスが発生しがちで、これが業務効率化を阻む原因となります。キャッシュレス化すれば、金額が間違いなく決済され、自動で記録も残るためミスなくスムーズな管理が可能となります。

例えば、経費精算の一部を現金支払いではなくクレジットカード決済にした場合、月末に利用明細を確認すれば相手先や金額をまとめて把握することができます。

さらに、カード情報を連携できる会計システムを導入すれば、自動で決済した情報を記帳できるなど大幅な業務効率化を進めることができます。

1-10. 小口現金を廃止して別の決済方法を採用する

取り組みやすさ工数削減効果
★★☆☆☆★★★★☆

「小口現金」で現場での経費清算を行っている場合には、小口現金を廃止して振込に変更することも検討しましょう。

小口現金を廃止すると、小口現金に関わるさまざまな業務が必要なくなるため、以下のようなメリットがあります。

・小口現金の残高が合わないなど、残高チェックの手間がなくなる
・小口現金の管理が必要なくなるため、盗難や紛失、不正を防止できる
・立替清算が発生するたびに清算処理(記帳や承認など)をしなくて済む

小口現金を廃止した場合の代替方法としては、

(1)経費を立て替えてもらって振込で清算する、(2)ビジネスカードを従業員に持たせるなどがあります。

(1)の方法だと月一回の清算で良くなり経理業務の負担が減りますが、立て替えが多い従業員の金銭的負担が増してしまう可能性がある点に注意が必要です。

(2)の方法と同時に経費精算システムを連携させることで、自動的に決済の内容や金額が反映されるため、経理業務のミスが無くなり計上漏れを防げるメリットがあります。大幅な効率化を目指したい場合には、ビジネスカードと経費精算システムの同時導入を検討してみると良いでしょう。

1-11.「ECRS(業務改善の4原則)」に沿って業務を統合・削減する

取り組みやすさ工数削減効果
★★★★★★★★☆☆

その他にも、慣例になっている経理業務の中で「やらなくて良い作業」を無くしたり統合していったりすることも業務効率化につながります。

経理業務を効率化する上での検討段階では、「ECRS(業務改善の4原則)」を活用することが重要です。ECRSとは、業務改善を目的とした4つの視点で構成されるフレームワークです。

【ECRSの原則】

Eliminate(排除・取り除く)例:小口管理を無くす
Combine(結合・つなげる)例:都度行っている経費精算を月1回にする
Rearrange(交換・組み替える)例:請求書の印刷・封入・発送をやめて、PDF化・メールで送信にする
Simplify(簡素化・単純にする)例:テンプレートを作成して簡単に業務が終わるようにする

現状、経理業務で時間がかかっている内容をヒアリングして、時間がかかる業務から見直していくことが重要です。

慣例になっているものの「実は必要ない無駄な業務」が隠れている可能性があります。そのような業務を見つけ出して、ECRSのいずれかの方法で効率化していきましょう。

2. ITツールを使って経理業務を効率化する方法

1章では、大がかりなITツール導入前に「今すぐ取りかかれる効率化方法」を紹介しました。

しかしながら、大幅に業務を効率化するにはやはり、「経費精算システム」や「会計システム」などのITツール活用が欠かせません。なぜならば、ITツールでの効率化の方が大幅な業務時間削減につながるからです。

特に、現状ツールを使わず手作業やエクセルなどで管理している場合には、ITツールの活用でかなり多くの工数を削減できる可能性が高いといえます。さらにミスも起こりにくくなるため、差し戻しの時間やミスが起こった原因を特定する時間なども削減可能です。

ここからは、ITツールを導入するとどのように経理業務を効率化できるかを具体的に解説していきます。

ITツールを使って経理業務を効率化する方法
(1)「会計システム」で伝票・仕訳業務を効率化する
(2)「請求書受領システム」で請求書業務を効率化する
(3)「経費精算システム」で経費精算・申請フローを効率化する
(4)その他の経理業務を効率化できるツール

なお、どのITツールの導入が必要になるかは、企業の現在の状態や業種などさまざまな要素によって変わってきます。自社ではどのツールを入れると効率化につながるかを考えながら、ぜひ読み進めていってください。

システム化に抵抗がある企業担当者様へ
予算が少ない企業では「できるだけシステムにお金をかけたくない」と考える方もいるかもしれませんが、ITツールを導入するだけで大幅な効率化を実現できるケースはかなりたくさんあります。システム化の選択肢を最初から排除してしまうのは非常にもったいないといえます。

例えば、経理業務の中でも「入金消込業務」に多くの時間がかかっている場合、全国の金融機関と連携しているシステムを使うことで、入金消込の工数を約90%削減できる例があります。

また、企業規模やシステムの種類にもよりますが、各システムの導入で「月20時間程度削減できた」というような事例はかなり多く聞かれます。

システムの多くは、誰でも直感的に簡単に操作できるよう設計されているため、工数削減だけでなく「ミスが減る」「知識や経験がなくても使える」というメリットもあります。

あくまで効率化の一つの選択肢として、どのようなシステムがあり、どの程度工数を削減できそうかもしっかり把握しておくことをおすすめします。

2-1.「会計システム」で伝票・仕訳業務を効率化する

「会計システム」とは、帳簿や決算書などの作成・管理をサポートするシステムです。インターネットで使えるクラウド型の会計システムが主流で、代表的なシステムとしては「弥生会計」「freee」「マネーフォワード」などがあります。

ある程度の規模の企業であれば「会計システムは既に導入している」という会社が多いはずです。もしもまだ「会計システム」を導入しておらず伝票やエクセルでの仕訳・記帳を行っている場合には、デジタル化の第一歩として会計システムの導入から始めていきましょう。

会計システムといってもさまざまなものがありますが、基本的な機能は以下のようなものです

会計システムの基本的な機能例
・伝票の入力・記帳
・帳簿の作成・出力
・自動仕訳
・金融機関などとのデータ連携
・決算書作成
・固定資産の管理など

会計システムを使うと、会計知識が乏しい従業員でも簡単に仕訳ができ、金融機関と連携して自動で仕訳処理ができるなど多くのメリットがあります。経理業務の大幅な効率化が図れますし、ミスや勘違いも起こりにくくなります。

機能やユーザー数などによって前後しますが、導入にかかる費用は「年額2万円〜4万円程度」が相場です。別途サポート料金がかかることがあります。

2-2.「請求書受領システム」で請求書業務を効率化する

「請求書受領システム」とは、請求書の受領・発行はもちろん、会計システムへの入力、データの管理までを一貫して行えるサービスのことをいいます。「請求書受領サービス」「請求書受取サービス」「請求書発行システム」などと呼ばれることもあります。

有名なサービスでいうと、「Bill One」「TOKIUM」「BtoBプラットフォーム請求書」などが該当します。

請求書受領システムを使うと、以下のようなメリットがあります。

請求書受領システムを使うメリット
・紙の請求書を電子化することで、印刷・封入・封緘・発送業務を削減できる
・郵送にかかる切手代や封筒代、紙代などのコストを削減できる
・承認者や発行者が会社にいなくてもオンラインで承認できる
・請求書の内容をそのまま記録できるため、ミスや計上漏れがなくなる
・承認プロセスを可視化できるため、承認までの確認作業も無くすことができる
・受領した請求書をそのまま連携できるため、転記作業がなくなる
・他サービスと連携することで、振込データも自動で作成できる

請求書に関わる経理業務を大幅に効率化できるだけでなく、郵送にかかっていたコストも削減できるのはとても大きなメリットでしょう。

取引先に対してデジタル化の理解を求める必要があるのがネックではありますが、電子化を進めていくことは効率化にとても重要となります。

請求書受領システムは月額固定で使えるサービスが主流で、月額5,000円〜3万円程度が相場となります。

2-3.「経費精算システム」で経費精算・申請フローを効率化する

「経費精算システム」とは、企業全体で導入して従業員自身に経費を入力・申請してもらうことで、経理担当の業務を大幅に改善できるシステムです。有名なシステムとしては「楽楽清算」や「ジョブカン」、「マネーフォワードクラウド経費」などがあります。

経費精算システムはサービスごとに機能が異なりますが、どのシステムも備えている基本的な機能としては以下のようなものがあります。

経費精算システムの基本的な機能例
・領収書の読み取り・自動入力
・交通費の自動計算
・ICカードとの自動連携
・自動仕訳機能
・振込データの自動作成
・外部ツール(会計システムや勤怠管理システムなど)との連携機能

例えば交通費の経費精算をする際に、申請する従業員が乗車した区間を指定するだけでシステムが自動で交通費を計算してくれるため、誰でも簡単に操作できミスを防ぐことができます。

何よりも、それぞれの従業員が経費精算の申請と同時に内容や金額を入力してくれるため、経理担当が全件入力する手間を軽減できます。経理業務を大幅に効率化できるシステムといえます。

経費精算システムの価格相場はさまざまですが、1人あたり月額300円〜600円程度で使えるものもあります。機能に合わせて、会計ソフトとの連携性も意識しながらシステムを選びましょう。

2-4. その他の経理業務を効率化できるツール

経理業務を効率化するITツールとして3つのシステムを解説しましたが、業種やサービス内容によっては他のツール導入が業務効率化につながるケースもあります。

例えば、以下のようなシステムを導入することで、業種やサービス内容によっては大幅な業務効率化ができる可能性があります。

【経理業務を効率化できるツール】

債権管理・入金管理システム債権情報や入金情報などを一元管理して、債権管理の効率化をサポートするシステム
固定資産管理システム固定資産に関する情報を一元管理できるシステム
予算管理システム当初の目標を達成できているか予実(予算と実績)を管理するシステム
入金消込自動化システム入金消込におけるプロセスを自動化できるシステム

どのツールの導入が効率化につながるかは、会社によって異なります。自社の悩みに応じて最適な効率化ツールを選ぶようにしましょう。

3. 経理業務の効率化を実現する5つのステップ

1章・2章では、経理業務を効率化する具体的な方法を、ITツールを使わない方法(今すぐできる方法)と使う方法に分けて解説しました。

具体的な手法を網羅的に確認することで、自社での効率化のイメージがだんだん沸いてきた方も多いでしょう。

ここからはさらに進んで、自社での効率化を進めるための5つのステップを解説していきます。ぜひこのステップを読み進めながら、具体的に効率化する方法やツールをイメージしてみてください。

3-1.【ステップ1】現状の経理業務の問題点を特定する

経理業務を効率化する最初のステップは、現状の経理業務を洗い出して「どこが非効率になっている原因になっているか」など問題点を特定することです。

このステップは非常に重要で、このステップをおろそかにしてしまうと、「システム化はしたけど業務が全く減らなかった」という結果になりがちなので注意しましょう。

例えば、現状の業務が非効率になっている原因が「入金確認や消し込み業務に相当な時間がかかっている」なのに、そうした現状を把握せずに、ただ「システムを入れれば効率化できるだろう」と経費清算システムを入れても意味がありません。

まずは、「何が問題で、効率化するとどれだけ工数を削減できるのか」をしっかり特定していくことが大切です。

具体的には、以下の流れで現状の業務の問題点を特定していきます。

経理業務の問題点を特定する流れ
(1)日次・月次・年次ごとに、経理業務を全て洗い出してみる
(2)それぞれの業務にかかる所要時間を書き出す
(3)時間がかかっている業務について、非効率になっている原因を考える

現状の問題点を特定する場合には、管理職だけで議論を進めるのではなく、必ず実際に業務にあたっている担当者にヒアリングしましょう。現場の声を聞くことで、「そもそも制度やルールが良くないのか」や「業務が属人化しているのか」など、改善するための打ち手が見えてくるはずです。

3-2.【ステップ2】ECRSを活用しながら「問題点を改善する方法」を決める

経理業務が非効率になっている原因が見えてきたら、先ほども出てきた「ECRS(業務改善の4原則)」を活用しながら、業務改善の手法を決めていきます。

【ECRSの原則】

Eliminate(排除・取り除く)必要のない業務をなくすことができないか検討する
Combine(結合・つなげる)似ているのに別々に進めている業務などを一本化できないか検討する
Rearrange(交換・組み替える)業務の順序や場所、システムの入れ替えで効率化できないか検討する
Simplify(簡素化・単純にする)複雑になっている業務をより単純な方法に変えられないか検討する

ECRSを活用する場合には、それぞれの要素を「E→C→R→S」の順番で実施していくことが重要といわれています。つまり、まず「なくせる業務がないか」を検討してみて、次に「一本化」、「交換・組み換え」、「簡素化」という順番で検討していきます。

ただし、経理業務の効率化においては、2章でも解説した通り、誰でも簡単にミスなく行えるシステムを導入することが、大幅な業務効率化につながることが多くあります。システム導入には予算が必要になりますが、システム導入でどのくらいの効率化につながるかという観点からもアプローチすることが必要です。

3-3.【ステップ3】効率化につながるITツールを検討する

ECRSの原則を活用すると同時に、3-1で特定した「ボトルネックとなっている問題点」をITツールで改善できないかもしっかり検討していくことが重要です。

予算が少ない企業の場合、「できるだけシステムを使わない効率化の方法」を探しているケースもあるかもしれませんが、効率化の効果が高いのはITツールを導入した方法となります。

以下の表を参考に、自社の経理業務の効率化につながるITツール(システム)がどれかを検討していきましょう。

【原因別・経理業務効率化につながるおすすめITツール】

経理業務が非効率になっている原因おすすめITツール
・手作業やエクセルなどデジタル化されていない
・手入力での伝票作成や記帳、入金確認に時間がかかっている
・仕訳ルールが分からないなど知識が乏しい従業員がいる
・決算整理仕訳など、転記する業務に時間がかかっているなど
会計システム
・請求書がバラバラで確認や入力に時間がかかる
・必要な項目が無いなど差し戻し作業に時間がかかっている
・印刷や発送など請求書にかかる業務に時間がかかっているなど
請求書受領システム
・小口処理に時間がかかっている
・交通費など経費を入力する手間が大変
・交通費が間違っているなど差し戻しに時間がかかっているなど
経費精算システム

なお、「自社での問題点がどこにあるか分からない」「問題を解決できるITツールがどれか自分では判断できない」という場合には、ぜひ弊社・中小企業DX研究所の「バックオフィス診断」サポートをご利用ください。

弊社が、御社の経理業務の内訳やかかった時間を分析して、効率化できるポイントを見つけ、自動化できるサービスやツールの選定、システム開発業務などあらゆる選択肢についてご提案いたします。

3-4.【ステップ4】ルール変更やITツール導入など実際に効率化を進める

ステップ4では、前ステップまでで決めた効率化の方法を実際に進めていきましょう。

例えば、承認ルールの見直しや一部業務の削減など、社内のルール変更を行う場合には、事前に調整して現場にしっかりと理解を求めてから実行することが大切です。

また、ITツールを導入する場合には、システムの中でもどのベンダーのツールを採用するかや、開発する場合には詳しい仕様を決めるなど最終調整が必要となります。費用がかかる場合には、予算策定を行って上層部の承認を得るなどの調整も必要でしょう。

実際に導入する場合に、システムのデモを使える場合には、現場に使ってもらってミスマッチを防ぐのもおすすめです。現場が使いやすく自社に合うシステムを導入しましょう。

3-5.【ステップ5】効率化後の評価・改善を引き続き行う

経理業務の効率化を進めた後は、やりっぱなしにせず、その効果を評価して、引き続き改善を行っていくことが重要です。PDCAサイクルでいうと「Check」、PDRサイクルでは「Review」の部分です。

具体的に「何時間の工数を削減できたのか」など客観的な評価を行うことで、適切な評価ができます。

期待通りに効率化が進まなかった場合には、その理由を検討していきましょう。例えば、請求書受領システムを導入したものの、取引先の多くが従来の紙ベースを採用したままなので、効率化がそこまで進まなかった、というようなケースが考えられます。

また、効率化はできたものの「効率化の代償になったものやデメリット」が顕在化するケースもあります。例えば、「経費精算システムを入れたが、従業員からの反発が大きかった」という状況などが考えられます。

効率化を進めたことによる効果や影響などをまとめて、必要に応じて別の手段を用意したり、システムの導入やリプレイスを検討したり、従業員の教育を行ったりという対策を考えましょう。

4. 経理業務の効率化で重要なポイント

経理業務を効率化する具体的な方法やステップについて解説したところで、最後に、効率化を進める時に意識すべき重要なポイントについても解説していきます。

「とりあえずやってみる」ことは重要ですが、やみくもに効率化を進めても上手くいきません。より早くより結果を出したいならば、この章の内容をしっかりと意識した上で効率化を進めていくことをおすすめします。

4-1.「どの効率化の方法がベストか」は企業によって異なる

まずとても重要なポイントとして、効率化の手段がたくさんある中で、どの方法がベストか(最も効率化の効果が高いか)は、企業によって異なるという点があります。

多くの企業がよくやりがちな失敗例として、他社の効率化の成功事例を鵜呑みにして、その方法を採用してしまう例があります。

「このシステムを導入することで工数を◯%削減できました!」というインパクトのある数字を見ると、つい「自社でもこの方法で大幅な効率化ができそう」と思ってしまうのですが、実はそうではありません。

同じ方法であっても、企業規模や業種、業務内容はもちろん、現状どの程度までシステム化が進んでいるのかなどによって、効率化で得られる結果は異なります

効率化できそうな方法の選択肢を洗い出した後には、自社でその方法で効率化した場合にどのくらいの効果を見込めそうかを試算してみることが大切です。また、費用がかかる場合には、費用対効果を比較することも重要です。

もしもこの検討が難しい場合には、企業規模や業種、システム化の進捗状況が似ている成功事例を参考にするのもおすすめです。(ただし、いくら似ている状況であっても、同じ効果が出るかどうかは複合的な要素が絡み合うため、断言はできません。)

自社でのベストな効率化を判断できない場合には、ぜひ弊社・中小企業DX研究所にお気軽にご相談ください。

4-2. 効率化を実現するには現場の意見を取り入れることが大切

経理業務を効率化する場合、実際に効率化を進めていくのは現場の担当者たちです。そのため、真の効率化を実現したいならば、現場の声をしっかりヒアリングして取り入れることが大切です。

例えば、何らかのシステムを導入する場合に、現場の声を聞かずに机上の空論で進めてしまうと、「通常業務だけでも大変なのに新しいシステムで負荷が増えてしまった」などとなりがちです。

現場の声を聞いた結果として「システム導入が最も効率化を図れそう」というところまで議論ができていれば、現場の担当者も「これで効率化が進む」と喜んでくれるはずです。できればシステム選定やシステムでどの程度効率化が進むかなどの議論にも積極的に参加してもらいましょう。

効率化するためのシステムを導入した場合、実際にそのシステムを使うことになるのも現場の担当者たちなので、「担当者が使いやすいシステム」「間違いやミスが起こりにくいシステム」を採択することも重要です。

システムを本格的に導入する前にデモを使える場合には、デモを現場で使ってもらって、操作性を複数のシステムで比較・検討するのも良いでしょう。現場から歓迎される効率化を進めていきましょう。

4-3. 自社の業種や規模に合ったシステムを導入する

システム導入が決まった場合には、自社の業種や規模感に合ったシステムを採択することが重要です。「たくさんあるシステムの中でどれを選ぶか」が効率化のポイントとなります。

例えば「会計システムを導入する」と決めた場合、どの会計システムを選んでも良いという訳にはいきません。会計システムといってもクラウド型やパッケージ型があり、大企業に向いているシステムもあれば小規模な会社に向いているものもあります。

数十種類またはそれ以上ある選択肢の中から、それぞれのシステムの特徴を見つけ出して、自社に最も合うシステムを導入することが重要です。機能が多ければ価格も高くなりますが、安価なシステムを選ぶと効率化したかった業務に対応していないこともあるでしょう。

「そのシステムを導入した時に使いたい機能は何か」「業態や仕事内容に合った機能が使えるか」などをしっかりと調査して、最も自社の業務を効率化できるシステムがどれかを選びましょう。

弊社・中小企業DX研究所の「バックオフィス診断」サポートにご相談いただければ、御社の経理業務の問題点を見つけ出して、御社に最適な効率化方法やサービス、ツールの選定をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

5. 経理業務の効率化に悩んだら、導入支援のプロ「中小企業DX研究所」にご相談ください

ここまで解説したように、経理業務の効率化には、ITツールを「使わない方法」と「使う方法」の2つの方向性があります。

かならずしもITツールを導入しなければならない訳ではありませんが、時代遅れにならないためにも、経理メンバーが働きやすい環境を整えるためにも、ITツールの導入を前向きに検討していくことがおすすめです。

しかしながら、どのITツールを導入すべきかは、会社の業種や現在の仕事の進め方などさまざまな要因によって変わります。全ての企業におすすめのシステムというのは存在しないため、自社に最も合うシステムを見つけて導入することがとても大切になってくるのです。

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まとめ

本記事では「経理業務の効率化」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

▼経理業務を効率化する11の方法【すぐに取り組める内容】

・経理業務マニュアルやテンプレートを作る
・振込業務や決済業務をオンラインで行う
・ChatGPTなどの生成AIを活用する
・請求書など書類のフォーマットを統一する
・業務フローをシンプルにする
・承認フローを見直す
・郵送業務を効率化する
・印刷・封入・発送業務を見直す
・現金のやりとりのキャッシュレス化を進める
・小口現金を廃止して別の決済方法を採用する
・「ECRS」に沿って業務を統合・削減する

ITツールを使って経理業務を効率化する方法

(1)「会計システム」で伝票・仕訳業務を効率化する
(2)「請求書受領システム」で請求書業務を効率化する
(3)「経費精算システム」で経費精算・申請フローを効率化する
(4)その他の経理業務を効率化できるツール

経理業務の効率化について、できることはたくさんあります。まずは身近な効率化から始めるのも良いですし、思い切ってシステムを導入して大幅な工数削減を狙うのもおすすめです。

迷うことがあればどんな些細なことでもぜひ中小企業DX研究所にご相談ください。

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