在庫管理とは?基礎知識から欠品と過剰在庫を防ぐ方法まで実践解説

「在庫管理の重要性はわかっているけれど、具体的にどう進めていいかわからない」
「欠品や過剰在庫を減らしたいのに、なかなか思うように在庫コントロールができない」

こうしたお悩みを抱える企業は少なくありません。

激化する市場競争のなかで、需要の変動に合わせて在庫を適正に管理することは、ますます難しくなっています。しかし、在庫管理を適切に行うことは、企業の競争力を高め、収益性を改善するために欠かせません。

 

この記事では、在庫管理の基本的な考え方から、欠品や過剰在庫を防ぐための具体的な方法まで、体系的に解説します。

最後までお読みいただくと、在庫管理の重要性や直面する問題を理解し、実践的なポイントを押さえ、効率的な在庫管理を実現できるようになります。

在庫管理の質を高め、顧客満足度の向上・キャッシュフローの改善・業務効率化など、自社の状況をよりよく改善していきましょう。

1. 在庫管理の基本とその重要性

 

在庫管理は、企業経営において欠かすことのできない重要な業務のひとつです。まずは在庫管理の基本的な考え方と、その重要性について解説します。

  1. 在庫管理とは何か?定義と目的
  2. 在庫管理が企業経営に与える影響

1-1. 在庫管理とは何か?定義と目的

在庫管理とは、商品やサービスを提供するために必要な材料や製品の在庫量を適正に保ち、需要に応じて効率的に供給するための一連の活動を指します。

その目的は、顧客ニーズに迅速かつ的確に応えつつ、在庫に関連するコストを最小限に抑えることにあります。

より具体的には、以下3つのポイントが挙げられます。

【在庫管理の3つの目的】

  • 適正な在庫量の維持:需要予測に基づいて適正な在庫量を保ち、欠品や機会損失を防ぎます。同時に、過剰在庫によるコスト増加も回避します。
  • 在庫コストの最小化:在庫保管費用や劣化・陳腐化リスクを抑えるために、在庫回転率を高め、適正な在庫水準を維持します。
  • 業務効率の向上:在庫情報の可視化や自動化を推進し、人的ミスを減らすことで業務の効率化を計ります。

在庫管理の目的を達成するためには、需要予測の精度を高め、在庫の可視化を進め、適正な発注量と発注タイミングを設定することが必要です。

1-2. 在庫管理が企業経営に与える影響

在庫管理は、企業の財務状況や競争力に直結する重要な経営課題です。

適切な在庫管理によって、企業は以下のようなメリットを享受できます。

【在庫管理が企業経営に与える好影響】

  • 収益性の向上:欠品による販売機会の損失を防ぎ、過剰在庫によるコスト増加を抑えて、企業の収益性を高めます。在庫管理の最適化は、利益率の改善に直結します。
  • キャッシュフローの改善:在庫として拘束される資金を最適化してキャッシュフローを改善し、資金繰りを安定させます。その結果、新たな投資や事業拡大の余力が生まれます。
  • 顧客満足度の向上:欠品を防ぎ、需要に即応して、顧客満足度を高めます。リピート率の向上や口コミによる新規顧客の獲得にも寄与します。
  • 競争力の強化:在庫管理の効率化は、コスト競争力の強化につながります。需要変動への迅速な対応力は、市場での競争優位性を高める要因となります。

逆に、在庫管理が不十分であれば、欠品による販売機会の損失、在庫の陳腐化や不良在庫の増加、倉庫スペースの圧迫など、さまざまな問題が生じます。

詳しくは、以下に続きます。

2. 在庫管理で直面する3つの問題

 

実際の在庫管理では、さまざまな問題に直面することがあります。あらかじめ、問題の内容を知っていれば、適切な対処が可能です。

以下では、在庫管理で生じやすい3つの問題とその影響について説明します。

  1. 欠品が顧客満足度を低下させる
  2. 過剰在庫が資金繰りを圧迫する
  3. 非効率な業務で生産性が落ちる

2-1. 欠品が顧客満足度を低下させる

1つめの問題は「欠品が顧客満足度を低下させる」です。

欠品は、在庫管理における最も深刻な問題のひとつです。

需要に応じた十分な在庫を確保できなければ、販売機会を逃すだけでなく、顧客満足度の低下を招く恐れがあります。

【欠品が顧客満足度に与える影響】

  • 販売機会の損失:欠品により、本来得られたはずの売上を逃してしまいます。なかでも、需要が高まる繁忙期の欠品は、大きな機会損失につながります。
  • 顧客離れ:欲しい商品が手に入らないと、顧客が競合他社に流れてしまう可能性があります。一度失った顧客を取り戻すのは、容易ではありません。
  • ブランドイメージの低下:頻繁な欠品は、企業の信頼性を損ない、ブランドイメージを低下させます。顧客の目には、供給能力が乏しい企業と映ってしまいます。
  • クレーム対応の増加:欠品に関する問い合わせやクレームが増加し、対応にかかる工数が増えます。顧客の不満を溜めるだけでなく、業務効率も低下します。
  • 取引先との関係悪化:小売店などの取引先に対して欠品が続くと、取引関係が悪化する可能性があります。取引停止となるケースも珍しくありません。

欠品を防ぐには、需要予測の精度を高め、適切な在庫量を確保することに尽きます。

同時に、欠品時の代替品の提案や、顧客とのコミュニケーションを丁寧に行って、影響を最小限に抑える取り組みも必要です。

2-2. 過剰在庫が資金繰りを圧迫する

2つめの問題は「過剰在庫が資金繰りを圧迫する」です。

過剰在庫は、欠品とは対照的な問題ですが、企業の財務状況に深刻な影響を与えます。

需要に対して過剰な在庫を抱えてしまうと、資金繰りが圧迫され、企業の健全性が損なわれる恐れがあるのです。

【過剰在庫が資金繰りに与える影響】

  • キャッシュフローの悪化:過剰在庫は、資金を在庫に固定させ、キャッシュフローを悪化させます。運転資金の不足は、事業活動の制約につながります。
  • 在庫保管コストの増加:過剰在庫を抱えていると、倉庫スペースや人件費、保険料など、在庫の保管にかかるコストが増加します。
  • 陳腐化リスクの増大:需要が見込めない在庫は、陳腐化や劣化のリスクが高まります。最悪の場合、廃棄処分が必要になり、大きな損失につながります。
  • 資金調達コストの増加:在庫の増加に伴い、運転資金の調達が必要になります。金利負担の増加や、調達条件の悪化など、資金調達コストが増大します。
  • 財務指標の悪化:過剰在庫は、在庫回転率の低下や流動比率の悪化など、企業の財務指標に悪影響を与えます。信用力の低下にもつながりかねません。

欠品を防ぎつつ、過剰在庫も防がねばならないバランスが、在庫管理の最大の難しさです。前述の需要予測の精度を高めるとともに、適正な発注量と発注タイミングを設定することが重要です。

定期的に棚卸しを実施し、不良在庫の早期発見と処分に努めることも欠かせません。

2-3. 非効率な業務で生産性が落ちる

3つめの問題は「非効率な業務で生産性が落ちる」です。

在庫情報の可視化が不十分だったり、手作業での管理に頼ったりしていれば、業務全体の生産性を低下させる要因となります。

【非効率な在庫管理が生産性に与える影響】

  • 人的ミスの増加:在庫情報の管理を手作業で行っていると、入力ミスや集計ミスなど、人的ミスが増加します。ミスの修正にかかる工数も無視できません。
  • 情報共有の遅れ:在庫情報が部署間で共有されていなければ、適切な意思決定が困難になります。販売機会の損失や過剰発注など、業務上のミスにつながる恐れがあります。
  • 業務の属人化:特定の担当者しか在庫の状況を把握していない場合、その担当者の不在時に業務が滞ってしまいます。属人化は、業務の継続性を損なう要因となります。
  • レスポンスの低下:在庫情報の把握や意思決定に時間を要すると、顧客の問い合わせ対応が遅れたり、納期に影響が出たりします。顧客満足度の低下は避けられません。

在庫管理の効率化を図るには、在庫の可視化やシステム導入により、情報の一元管理と共有を進めることが鍵となります。

以上、在庫管理にまつわる3つの問題を取り上げました。

 

続いて以下では、在庫管理を最適化する実務のポイントについて、見ていきましょう。

3. 在庫管理を最適化する具体的な実践ポイント

 

在庫管理の問題を解決し、最適化を図るには、具体的な実践ポイントを押さえる必要があります。

以下では、在庫管理の効率化と適正化に向けた取り組みについて、重要ポイントを解説します。

  1. 在庫の可視化
  2. 適正在庫の算出
  3. 発注点管理の導入
  4. 在庫回転率の向上
  5. 定期的な棚卸しの実施
  6. 不良在庫の処分

3-1. 在庫の可視化

1つめのポイントは「在庫の可視化」です。

在庫管理の最適化に向けた第一歩は、在庫の可視化です。

【在庫の可視化に向けた取り組み】

  • 在庫管理システムの導入:在庫情報を一元管理し、リアルタイムに把握できる在庫管理システムを導入します。たとえば、クラウド型のシステムを活用すれば、柔軟性と拡張性を確保できます。
  • バーコード管理の導入:倉庫ではバーコードを活用すると、入出庫の記録や棚卸しの効率化が図れます。人的ミスの削減と、作業工数の大幅な削減が期待できます。
  • 部署間の情報共有の強化:在庫情報を部署間で共有し、需給のミスマッチを防ぐ仕組みを構築します。情報共有のルールを定め、コミュニケーションの活性化を図ります。

このように在庫情報を一元管理し、リアルタイムに把握できる体制を整え、需要変動への迅速な対応や、意思決定の精度向上につなげていきます。

3-2. 適正在庫の算出

2つめのポイントは「適正在庫の算出」です。

「そもそも、どれだけの在庫を保持しているべきなのか?」の基準を誤ると、すべてが誤ってしまいます。

的確に適正在庫量を算出するためには、需要予測と安全在庫の設定が重要なポイントとなります。

【適正在庫の算出に向けた取り組み】

  • 需要予測の精度向上:過去の販売実績や市場動向、顧客ニーズなどを分析し、需要予測の精度を高めます。AIやビッグデータ分析などの技術を活用するのも有効です。
  • リードタイムの把握:仕入れから入荷までのリードタイムを正確に把握し、適切なタイミングで発注できるようにします。リードタイムの短縮に向けた取り組みも行います。
  • 安全在庫の設定:需要変動や供給リスクに備えて、一定量の安全在庫(不測の事態に備えて確保しておく在庫)を設定します。安全在庫は、品目ごとの重要度や入手難易度を考慮して、適切なレベルを設定します。
  • ABCランク分けの活用:在庫をABCランクに分類し、重要度に応じた管理を行う手法も有効です。Aランクの重要アイテムは、厳格な管理を行い、欠品リスクを最小限に抑えます。

これらの取り組みを通じて、欠品リスクと過剰在庫リスクのバランスを取りながら、在庫の最適化を図っていきます。

3-3. 発注点管理の導入

3つめのポイントは「発注点管理の導入」です。

定めた適正在庫量を維持するために、発注点管理の導入が効果的です。

発注点とは、在庫量が一定の水準に達した時点で、発注を行うための基準となる在庫量のことです。

【発注点管理の導入手順】

  • 発注点の設定:品目ごとに、需要予測とリードタイムを考慮して、適切な発注点を設定します。安全在庫の水準も考慮に入れます。
  • 発注ロットの適正化:発注ロットを適正化し、過剰在庫のリスクを抑えます。必要に応じて発注先とも交渉し、1回あたりの発注量を最適化します。
  • 自動発注システムの導入:在庫量が発注点に達した時点で、自動的に発注が行われるシステムを導入し、業務の効率化と人的ミスの防止につなげます。
  • サプライヤーとの連携強化:サプライヤーとの情報共有を密にし、リードタイムの短縮や、緊急時の対応力強化を図ります。
  • 定期的な見直しと改善:発注点や発注ロットは、需要の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。PDCAサイクルを回しながら、継続的な改善を図っていきます。

このような発注点管理がうまく機能していれば、常に適正在庫が維持され、効率的に業務が回っていきます。

3-4. 在庫回転率の向上

4つめのポイントは「在庫回転率の向上」です。

在庫回転率は、在庫管理の効率性を測る重要な指標です。在庫回転率が高いほど、在庫として拘束される資金が少なくなり、手元資金に余裕ができてキャッシュフローが改善します。

在庫回転率は、次の計算式で求められます。

在庫回転率 = 売上高 ÷ 平均在庫金額

 

この式からわかるように、在庫回転率を高めるには、売上を増やすか、在庫を減らすか(または両者)の取り組みが必要です。

【在庫回転率を向上させる方法】

  • 販売施策の強化:販売施策を強化し、在庫の回転を速めます。需要予測と実績を一致させるための追加施策や、在庫処分セールなどの活用が有効です。
  • 仕入れリードタイムの短縮:仕入れリードタイムを短縮し、在庫の回転サイクルを速めます。サプライヤーとの連携強化や、物流の効率化などが求められます。
  • 需要予測の精度向上:前述の解説と重複しますが、需要予測の精度を高め、適正な在庫量を維持することは、在庫回転率の向上に欠かせません。
  • 不良在庫の削減:不良在庫を減らし、在庫回転率の低下を防ぎます。後述する定期的な棚卸しや、滞留在庫の早期処分などが有効です。

在庫回転率を高めるためには、営業やマーケティングなどのフロントオフィスと、在庫管理を担うバックオフィスの連携や信頼関係の構築も欠かせません。

たとえば、「在庫を積み増ししても、フロント部門はかならず売り切ってくれる」という信頼があれば、バックオフィスも自信を持って発注できるようになります。

3-5. 定期的な棚卸しの実施

5つめのポイントは「定期的な棚卸しの実施」です。

在庫管理の精度を維持するためには、定期的な棚卸しが欠かせません。

棚卸しとは、在庫の実際の数量や状態を確認し、帳簿上の在庫データとの照合を行うことです。

【定期的な棚卸しの実施方法】

  • 棚卸し頻度の設定:在庫の重要度やリスクに応じて、適切な棚卸し頻度を設定します。決算のための棚卸し(棚卸資産の計上)は事業年度ごとに必要ですが、在庫管理上は、1カ月に1回(少なくとも3カ月に1回)は棚卸しを行うことが望ましいでしょう。
  • 実地棚卸しの徹底:実際に在庫を数えて確認する実地棚卸しの徹底が、非常に重要です。自社倉庫はもちろん、倉庫を外部委託している場合でも、定期的に現地を訪れて確認を行いましょう。
  • 棚卸しデータの分析:棚卸しで得られたデータは毎回分析し、問題点の早期発見に努めます。こまめに対策を行い、問題が大きくなる前に改善します。

棚卸しは、在庫管理に対する社内意識を高めるタイミングとしても活用しましょう。

たとえば、過剰在庫が積み上がっている時期には、マーケティングや営業の担当者も、倉庫での棚卸しに同行するとよいでしょう。

実際の在庫を目の当たりにすると、「在庫回転率を高めなければならない」という危機感が、当事者意識として芽生えるからです。

3-6. 不良在庫の処分

6つめのポイントは「不良在庫の処分」です。

不良在庫とは、需要が見込めない、あるいは販売可能な期限が切れた在庫のことです。

不良在庫を放置すると、在庫管理の効率性を低下させ、企業の収益性を圧迫する要因となります。

適切なタイミングで損切りする必要がありますが、多くの企業では心理的にずるずると後回しにされがちです。コストがかさみ続ける要因となります。

だからこそ、社内のルールとして定め、仕組みとして処分していくことが重要です。

【不良在庫を削減する方法】

  • 在庫の定期的な見直し:在庫の状態を棚卸しのタイミングなどで定期的に確認します。滞留在庫や期限切れ在庫を常に可視化し、完全な不良在庫になる前の段階で、販売できるように早期対処します。
  • 在庫処分ルールの設定:不良在庫の処分に関するルールを明確に定めておきます。問題が発覚するたびに協議するのではなく、事前に設定した基準に到達したら、自動的に迅速対応できるように、処分のタイミングや処分方法を事前に決めておきます。
  • 廃棄を防ぐ試み:在庫処分の方法として、できる限り廃棄を回避するルートを確保しておきましょう。在庫処分セールやアウトレットモールへの販売のほか、商材によっては既存顧客へのプレゼントや慈善団体への寄附が可能なケースもあります。

不良在庫は放置していても、劣化や陳腐化が進行するばかりのため、早期対処が鍵となります。

以上、6つのポイントを解説しました。

 

これらを効果的かつ効率的に実行する中核となるのが「在庫管理システム」です。以下に続きます。

4. 効率的な在庫管理システムの選定と導入

 

在庫管理の最適化を図るためには、効率的な在庫管理システムの選定と導入が重要です。

ここでは、在庫管理システムに求められる機能や、選定の基準、導入の手順などについて解説します。

4-1. 在庫管理システムに必要な主要機能

在庫管理システムを選定する際には、自社の業務に必要な機能を十分に検討することが重要です。

在庫管理システムに求められる主要な機能は以下のとおりです。

【在庫管理システムに必要な機能】

  • 在庫の可視化機能:在庫情報をリアルタイムで把握できる機能です。在庫量や在庫の状態、在庫の所在地などを一元的に管理できることが求められます。
  • 入出庫管理機能:入荷や出荷、移動などの在庫の動きを正確に記録し、管理できる機能が必要です。バーコードなどの自動認識技術との連携は、倉庫業務の効率化のために重要です。
  • 発注管理機能:リードタイムや安全在庫を考慮して、適切なタイミングで発注できる機能です。自動発注機能があると、業務の効率化が図れます。
  • 在庫評価機能:在庫の評価額を算出し、決算書に必要なデータを提供できる機能です。在庫の評価方法には、先に入荷した商品から順に売上原価とする先入先出法や、平均単価を用いる総平均法などがあります。自社の評価方法に対応できるかどうか、確認が必要です。
  • データ分析機能:在庫データを分析し、需要予測や適正在庫量の算出に活用できる機能です。企業によっては、AIやビッグデータ分析との連携も視野に入れる必要があります。

在庫管理システムに必要な機能は、業種や業態によって異なります。

自社の業務に不可欠な機能を見極め、優先順位をつけて選定することが重要です。

4-2. 自社の業態に合ったシステムを選ぶ基準

システムの選定に際しては、機能以外にも検討すべきポイントがあります。以下は、重要な基準として念頭に置きたいポイントです。

【在庫管理システムの選定基準】

  • 業務適合性:自社の業務プロセスや、商習慣に合ったシステムであることが重要です。業務に不可欠な機能が備わっているかを確認する必要があります。
  • 導入コスト:システムの導入にかかる初期費用や、ランニングコストを十分に検討します。TCO(総保有コスト)を見積もり、費用対効果を評価しましょう。
  • ユーザビリティ:システムの操作性や、ユーザーインターフェースのわかりやすさは、現場にとって非常に大切です。実務担当者が使いこなせるシステムであることを確認します。
  • カスタマイズ性:自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズできることも重要です。カスタマイズの容易さや、その費用対効果を検討する必要があります。
  • サポート体制:システムの導入後のサポート体制を確認します。トラブルへの対応や、問い合わせへの回答など、十分なサポートが提供されるか、チェックしましょう。

4-3. 代表的な在庫管理システムの例

「具体的に、おすすめの在庫管理システムはどれ?」という質問の回答は、個社の状況によって変わります。一概にお答えするのは難しいのですが、以下に代表的な在庫管理システムをリストアップしました。


システム名

特徴

SAP ERP
●世界最大級のERP(*1)ベンダーが提供●在庫管理機能が充実●グローバルな在庫管理に適している●大企業向けのハイエンドシステム

Oracle NetSuite
●クラウドベースのERPシステム●リアルタイムの在庫把握が可能●需要予測や自動発注機能を備える●在庫回転率や在庫評価の分析に優れる

受発注EDI-Webサービス
●国内シェアNo.1のクラウド型EDI(*2)サービス●大手小売業との連携に特化●豊富なデータ連携機能を備える

Microsoft Dynamics 365
●クラウドベースのERPシステム●在庫管理、販売、購買、財務管理を統合●中小企業から大企業まで幅広く対応●AIを活用した需要予測機能

Infor CloudSuite
●クラウドベースのERPシステム●製造業や流通業に特化●リアルタイムの在庫管理と分析●柔軟なカスタマイズが可能

Zoho Inventory
●中小企業向けのクラウドベース在庫管理システム●多言語対応●複数の販売チャネルと連携●在庫の追跡と管理が簡単


*1:ERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、在庫管理を含む企業のさまざまな業務プロセスを統合的に管理するシステムです。
*2:EDIとは、Electronic Data Interchangeの略で、企業間で発注や請求などの商取引データを標準的な書式で電子的に交換する仕組みです。

まずは、自社の業種業態での導入事例が多いシステムを探して、トライアルやデモを体験することをおすすめします。

4-4. 中小企業におすすめの自社システム開発

一方、中小企業の場合、多額の投資をして大企業向けのシステムを導入しても、うまく使いこなせないケースが少なくありません。

 

その場合には、自社に必要十分な機能を持った、使い勝手の良いシステムを開発するアプローチがおすすめです。自社専用の在庫管理システムを構築できます。

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4-5. 導入成功のための具体的な手順

最後に、在庫管理システムの導入を成功させるための具体的な手順を確認しておきましょう。

【在庫管理システム導入の手順と注意点】

  • 要件定義:在庫管理システムに求める要件を明確にし、文書化します。業務プロセスや、必要な機能、データ連携などを整理し、関係者間で合意形成を図ります。
  • ベンダー選定:要件に基づいて、複数のベンダーに提案を依頼します。提案内容を比較検討し、最適なベンダーを選定します。
  • 契約締結:選定したベンダーと契約を締結します。価格や納期、保守体制など、重要な事項を明確にし、契約書に記載します。
  • プロジェクト体制の構築:社内にプロジェクトチームを立ち上げ、役割分担を明確にします。ベンダーとの連携体制も構築します。
  • データ移行:既存のデータを新しいシステムに移行します。データのクレンジングや、フォーマットの変換などが必要になります。
  • ユーザー教育:システムの使い方や、業務プロセスの変更点などを、ユーザー(従業員)にトレーニングします。マニュアルの作成や、研修の実施を行います。
  • 本番稼働とフォローアップ:システムを本番稼働させた後は、運用状況を定期的にモニタリングし、問題点を改善していきます。

在庫管理システムの導入は、綿密な計画を立て、着実に実行していくことが重要です。

社内に専門人材がいない場合には、外部パートナーの知見を活用して、失敗のないように進めることをおすすめします。

外部パートナーをお探しの際にも、中小企業DX研究所へお気軽にご相談ください。

5. まとめ

本記事では「在庫管理」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

最初に、在庫管理の基本として以下を解説しました。

  • 在庫管理は企業経営に欠かせない重要な業務である
  • 在庫管理の目的は顧客ニーズへの迅速な対応と在庫コストの最小化
  • 需要予測の精度向上、在庫の可視化、適正な発注量と発注タイミングの設定が求められる

在庫管理で直面する問題として、以下が挙げられます。

  1. 欠品が顧客満足度を低下させる
  2. 過剰在庫が資金繰りを圧迫する
  3. 非効率な業務で生産性が落ちる

在庫管理を最適化する具体的な実践ポイントは、以下のとおりです。

  1. 在庫の可視化
  2. 適正在庫の算出
  3. 発注点管理の導入
  4. 在庫回転率の向上
  5. 定期的な棚卸しの実施
  6. 不良在庫の処分
  7. 効率的な在庫管理システムの選定と導入

在庫管理の最適化は企業の競争力と収益性を高めるために不可欠です。本記事で解説した在庫管理の基本的考え方と具体的な実践ポイントを押さえ、自社の状況に合わせた在庫管理の改善に取り組んでいただければ幸いです。

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