「生産性って、そもそも何?」
「生産性を上げるには、具体的にどのような方法がある?」
こうした疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
生産性とは簡単にいえば、投入した資源(インプット)に対して得られた成果(アウトプット)の割合のことです。
生産性の向上は、企業の成長に不可欠な要素です。生産性の高い組織は、収益性が高いだけでなく、従業員にとってもやりがいと働きやすさのある環境となります。
この記事では、生産性の基本概念や計算式、生産性向上策まで、網羅的に解説します。
本記事を通じて、生産性について理解を深め、向上に向けた取り組みを始めていただければ幸いです。
1. 生産性とは?その意味と計算式
まずは生産性とは何か、その意味や計算式を具体的に見ていきましょう。以下のポイントを解説します。
- 生産性の定義:インプットに対するアウトプットの割合
- 生産性を表す5つの指標と計算式
- 物的生産性と付加価値生産性の違い
- 全要素生産性(TFP)が示す生産性の本質
- 生産性と効率性・パフォーマンスとの違い
1-1. 生産性の定義:インプットに対するアウトプットの割合
冒頭でも触れたとおり、投入した資源(インプット)に対して得られた成果(アウトプット)の割合を、生産性といいます。
ここでいう「インプット」とは、生産活動に投入した労働力や設備、原材料などの資源を指します。一方、「アウトプット」とは、生産活動によって生み出された製品やサービスの価値を意味します。
つまり、生産性を高めるためには、以下3つのいずれかが必要となります。
- インプットを一定にしてアウトプットを増やす
- アウトプットを一定にしてインプットを減らす
- アウトプットを増やしながらインプットを減らす
1-2. 生産性を表す3つの指標と計算式
生産性を表す代表的な指標として、労働生産性、付加価値生産性、全要素生産性の3つが挙げられます。
【生産性の3つの指標】
- 物的労働生産性:労働投入量に対する産出量の割合を表しており、労働時間や労働者数で割って算出します。
〈計算式〉物的労働生産性 = 産出量 ÷ 労働投入量(労働時間または労働者数) - 付加価値労働生産性:労働投入量に対する付加価値の割合を表しており、企業が生み出した付加価値を労働時間や労働者数で割って算出します。
〈計算式〉付加価値労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働投入量(労働時間または労働者数) - 全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP):労働以外の投入要素も考慮した生産性を示す指標です。技術進歩や効率性の向上なども含めた、生産要素の質的な改善を反映するのが特徴です。
〈計算式〉全要素生産性 = 生産量 ÷ 全要素投入量
これらは聞き慣れない方も多いかと思います。以下でもう少し詳しく掘り下げましょう。
1-3. 物的生産性と付加価値生産性の違い
まず、「物的生産性」と「付加価値生産性」は、生産性を測る代表的な指標ですが、その基準に違いがあります。
物的生産性は物理的な生産量を基準とした指標である一方、付加価値生産性は生み出された付加価値を基準とした指標です。
【物的生産性と付加価値生産性の特徴】
- 物的生産性:生産量を基準とした指標です。労働者1人あたりや設備1台あたりの生産量を測定し、生産効率の評価に適しています。
- 付加価値生産性:創出された付加価値を基準とした指標です。投入した労働や資本に対して、どれだけの付加価値を生み出したかを測定します。収益性の観点から生産性を評価する際に用いられます。
補足として、付加価値生産性を算出する際には、「付加価値額」の計算が必要です。計算方法は業種業態あるいは企業によって異なりますが、たとえば製造会社なら、以下のような計算式が考えられます。
付加価値額 = 売上高 -(原材料費 + 外注費 + 動力光熱費 + 販売手数料 + 通信費 + 広告宣伝費 + 運賃 + その他の経費)
物的労働生産性および付加価値労働生産性の計算例を見てみましょう。
上記は、労働時間あたりの生産数量で計算しています。一方、下記のように従業員1人あたりの生産性を算出することもできます。
1-4. 全要素生産性(TFP)が示す生産性の本質
「全要素生産性(TFP)」は、労働以外の投資要素も含めた総合的な生産性を表す指標であり、生産性の本質を捉えるうえで重要な概念です。
TFPは、投資要素の質向上や技術進歩、イノベーションの結果など、生産要素の質的な改善を反映するため、企業の競争力の源泉ともいえます。
なお、経済学など学術的な分野でTFPを計算する際には、より複雑な計算式が用いられます。たとえば、中小企業白書の「中小企業の全要素生産性(TFP)」にて採用されている計算式は、「付注1-3-1 企業規模別の労働生産性、TFPの計算方法について」にて詳説されています。より専門的な情報が必要な方はご確認ください。
1-5. 生産性と効率性・パフォーマンスとの違い
「生産性」と類似した言葉として、「効率性」や「パフォーマンス」があります。それぞれの違いを整理しておきましょう。
日本語 | 英語(カタカナ) | 定義・意味 |
---|---|---|
生産性 | Productivity(プロダクティビティ) | インプットに対するアウトプットの比率。投入した資源に対して得られる成果の度合いを表す。 |
効率性 | Efficiency(エフィシエンシー) | 無駄を排除し、最適な方法で資源を活用する度合い。目標達成に要するリソースの最小化の度合いを示す。 |
パフォーマンス | Performance(パフォーマンス) | 組織や個人が達成した成果の総合的な評価。目標に対する達成度、質、速度、コストなどの観点から測定される。 |
生産性(Productivity)は、インプットとアウトプットの比率に着目し、投入した資源に対してどれだけの成果が得られたかを表します。
効率性(Efficiency)は、リソースの最適な活用に重点を置き、無駄を排除して目標達成に必要な資源を最小限に抑えることを意味します。
パフォーマンス(Performance)は、組織や個人の成果を総合的に評価するもので、目標達成度、質、速度、コストなど多面的な観点から測定されます。
それぞれ重なる部分も多い言葉ですが、どこに重きを置くのか、文脈によって適切な用語選択が必要です。
2. 企業が押さえておきたい生産性の背景
続いて、企業の生産性の改善に取り組む際に、知っておきたい以下の背景情報について見ていきましょう。
- 日本の生産性は低い(38カ国中 31位)
- 日本企業の生産性が低い理由
2-1. 日本の生産性は低い(38カ国中 31位)
世界的に見ると、日本は生産性が低いことが指摘されています。以下はOECD加盟国の労働生産性 (2022年)ですが、38カ国中、日本は31位です。
出典:中小企業庁「中小企業白書 小規模企業白書 2024年版」
OECD平均(115,454ドル)と比較しても、日本は85,329ドルと平均の7割強にとどまります。第1位のアイルランドと比べると、日本の生産性はわずか3分の1程度しかありません。
単純化して考えれば、日本の労働者はアイルランドの労働者に比較して3倍の労働をしないと、同等の成果を生み出せない状況になっています。
2-2. 日本企業の生産性が低い理由
日本企業の生産性が低い原因を探ることは、生産性向上の第一歩といえます。業務プロセスの非効率性、IT化の遅れ、硬直的な組織文化など、日本特有の課題が存在します。
【日本企業の生産性が低い理由】
- 非効率な業務プロセスの存在:非効率な業務フローや時代遅れの慣習が残っており、無駄な作業が多くあります。マニュアルの整備や業務の標準化が不十分なため、属人化が進んでいます。
- IT化の遅れ:欧米に比べ、業務のIT化や自動化への投資が遅れています。アナログ作業が多く残り、リモートワークへの対応も不十分です。社内のペーパーレス化が進まず、情報共有も非効率的です。
- ジョブ型雇用と年功序列の混在:ジョブ型雇用と年功序列が混在し、適材適所の人員配置が難しくなっています。高度な専門性を持つ人材の活躍の場が限定的で、人材の流動性が低くなっています。
- 硬直的な組織文化:上意下達の組織文化が根強く、現場の創意工夫が生かしにくい環境にあります。前例踏襲主義が強く、変化に対する適応力が弱くなっています。リスクを取らない風土が新しいチャレンジを阻害しています。
- 長時間労働への依存:長時間労働が当たり前となっており、業務の効率化やメリハリある働き方が浸透していません。仕事の密度が低く、成果よりも労働時間を重視する傾向があります。
これらの課題は日本企業に共通する問題点ですが、同時に大きな改善余地(伸びしろ)があることを示しています。
2-3. 生産性向上が企業に与えるメリット
一方、生産性向上に本格的に取り組めば、企業に大きなメリットをもたらします。
【生産性向上がもたらすおもなメリット】
- コスト削減と収益性の向上:無駄な作業を削減し、業務の効率化すれば、コストを大幅に削減できます。同時に、生み出す付加価値を増やし、売上高と利益率の向上が期待できます。
- 従業員のモチベーション向上:業務の効率化により、従業員の労働時間が短縮され、ワークライフバランスが改善されます。適正な業務量と明確な成果責任が、従業員のやりがいとモチベーションを高めます。
- イノベーションの創出:生産性向上によって生み出された時間的・経済的な余力を、新たな価値創造に振り向けられます。研究開発や新規事業への投資が活発化し、イノベーションが次々と生まれる土壌が育まれます。
- 顧客満足度の向上:業務の効率化とスピードアップにより、顧客への対応品質が向上します。リードタイムの短縮や的確な問題解決が可能となり、顧客満足度とロイヤルティ(信頼や愛着度)の向上につながります。
- 企業価値の向上:生産性の高さは企業の競争力の源泉であり、金融機関や投資家から高く評価されます。業績の安定と成長性の向上により、資金調達力の強化が期待できます。
生産性向上が企業の持続的成長に不可欠であることを認識し、全社を挙げて取り組むことが重要です。
3. 企業の生産性を高める7つの方法
ここからは実践の話に移っていきましょう。企業の生産性を高める具体的な7つの方法を解説します。
- 業務の棚卸しを行う
- 目標の明確化とKPI設定で全員の意識を合わせる
- 適材適所の人員配置と多能工化を行う
- 情報共有とコミュニケーションの活性化を図る
- 個人の生産性を高める
- 業務の標準化とIT化で属人性を排除する
- 従業員エンゲージメントを高める職場環境を整備する
それぞれ見ていきましょう。
3-1. 業務の棚卸しを行う
1つめの方法は「業務の棚卸しを行う」です。
生産性向上の取り組みを効果的に進めるには、まず現状の業務を詳細に把握することが不可欠です。
業務の棚卸しを通じて、各プロセスの必要性や効率性を精査し、改善の余地を発見できます。無駄な業務や重複したタスクを特定し、それらを排除または最適化するところから始めましょう。
【業務の棚卸しの重要ポイント】
- 現状把握:既存の業務フローを詳細に文書化します。各タスクの所要時間・担当者・使用するツールなどを明確にします。業務全体を可視化しましょう。
- 必要性の検証:各業務の目的や成果を再確認します。組織の目標達成にどう貢献しているかを評価し、不要なプロセスを特定します。
- 効率性の分析:各タスクの実行方法を詳細に分析します。手作業で行っている業務の自動化や、複数の部門で重複して行われている作業の統合について、可能性を探ります。
- 優先順位づけ:改善が必要な業務に優先順位をつけます。費用対効果や実現可能性を考慮し、短期的に取り組むべき課題と中長期的な課題を区別します。
- 改善案の立案:特定された課題に対する具体的な改善案を策定します。プロセスの簡素化、システム導入、業務の再配分など、多角的なアプローチを検討します。
業務の棚卸しは、組織全体の業務最適化への第一歩となります。この過程で得られた洞察は、システム導入や業務改革の基盤となり、真の意味での生産性向上を実現します。
なお業務の棚卸しをする際には、外部の専門家のサポートを得ることも有益です。客観的視点から、生産性向上に直結する示唆が得られます。
※中小企業の生産性向上に関わる業務の棚卸しについては、ぜひ中小企業DX研究所へご相談ください。
3-2. 目標の明確化とKPI設定で全員の意識を合わせる
2つめの方法は「目標の明確化とKPI設定で全員の意識を合わせる」です。
チームの生産性向上には、全員が同じ目標に向かって努力することが不可欠です。
目標を明確に設定し、達成度を測るための適切なKPI(重要業績評価指標)を設定すると、メンバーの意識を合わせやすくなります。
【目標の明確化とKPI設定のポイント】
- SMARTな目標設定:具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、目的と関連する(Relevant)、期限付き(Time-bound)な目標を設定します。曖昧な目標は避けます。
- KPIの適切な選択:目標達成度を測定するための適切なKPIを選択します。数値化しやすく、業務の成果と直結するものが適しています。過去のデータをベースライン(基準値)として活用します。
- 目標とKPIの共有:目標とKPIをチーム全員で共有します。個人の目標とチームの目標を連動させます。定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行います。
- 評価とフィードバック:KPIの達成度に基づいて公正な評価を行います。良い点と改善点をフィードバックし、メンバーの成長を促します。評価結果は次の目標設定に反映します。
目標とKPIは、チームの羅針盤となるものです。目標達成に向けた道のりを共有していくと、チームの一体感が生まれます。一体感は、生産性の原動力です。
3-3. 適材適所の人員配置と多能工化を行う
3つめの方法は「適材適所の人員配置と多能工化を行う」です。
チームの生産性を高めるには、メンバーの能力を最大限に引き出す人員配置が欠かせません。
適材適所を徹底し、メンバーのスキルと適性に合った仕事を割り当てることが、無駄のない業務遂行に直結します。
一方、人的リソースに制約のある中小企業では、一人で複数の工程を担当できる多様なスキルを持つ人材の育成(多能工化)が鍵となります。
【適材適所の人員配置と多能工化の進め方】
- メンバーのスキル・適性の把握:メンバー一人ひとりのスキルや適性・経験・興味関心を詳しく把握します。面談や適性検査、過去の実績などから多角的に分析します。
- 業務の分析と要件定義:チームの業務を洗い出し、各業務に必要なスキルや経験を明確にします。業務の特性・難易度・所要時間なども整理します。
- 能力評価表の作成:メンバーのスキルと業務要件を一覧化します。各人のスキルレベルを可視化し、適切な業務割り当ての指針とします。
- 計画的な業務ローテーションの実施:定期的に業務を入れ替え、メンバーが多様な経験を積める機会を設けます。複数の業務をこなせる人材を育成し、急な欠員や繁忙期にも柔軟に対応できる体制を整えます。
- OJTとOffJTの組み合わせ:適材適所の配置と並行して、計画的なOJT(職場内訓練)とOffJT(職場外研修)を実施します。メンバーのスキルアップと多能工化を促進します。
適材適所の人員配置と多能工化は、チームの生産性を高めるうえで両輪の関係にあります。
メンバーの能力を最大限に活かしつつ、柔軟な配置換えが可能な体制を整えましょう。
3-4. 情報共有とコミュニケーションの活性化を図る
4つめの方法は「情報共有とコミュニケーションの活性化を図る」です。
チームの生産性向上には、メンバー間の円滑な情報共有とコミュニケーションが欠かせません。
さまざまなツールを駆使し、情報共有とコミュニケーションの活性化に取り組むことが重要です。
【情報共有とコミュニケーション活性化の方策】
- 情報共有ツールの積極活用:クラウドストレージ、グループウェア、プロジェクト管理ツールなど、情報共有に役立つツールを積極的に活用します。メンバー全員がアクセスしやすいツールを選び、最新の情報にアップデートされている状態を保ちます。
- 定期的なミーティングの実施:定期的なミーティングを実施し、進捗状況の確認と情報共有を行います。単なる報告会にならないよう、議論の活性化を心がけます。オンラインミーティングも有効に活用します。
- 文書化の推進:プロジェクトの計画書、議事録、マニュアルなど、業務に関する文書化を推進します。暗黙知(経験や勘に基づく知識)を形式知(明文化された知識)に変換し、チーム内で共有しやすい形にまとめます。
- インフォーマルコミュニケーションの促進:業務外の交流の場を設け、メンバー間の非公式な対話(インフォーマルコミュニケーション)を促進します。普段から気軽に相談や雑談ができる雰囲気を作ることが、円滑なコミュニケーションにつながります。
- コミュニケーション研修の実施:コミュニケーションスキルを学ぶ研修を実施します。傾聴(相手の話を積極的に聞くこと)、アサーション(自分の意見を伝える技術)、ファシリテーション(話し合いを促進する技術)など、生産性の高いコミュニケーションを実践できる能力を養います。
情報共有とコミュニケーションの活性化は、チームの一体感と生産性を高めるうえで重要な役割を果たします。必要な投資を行い、後回しにせずに取り組んでいきましょう。
3-5. 個人の生産性を高める
5つめの方法は「個人の生産性を高める」です。
チームメンバー一人ひとりの生産性向上は、チーム全体の生産性向上につながります。
リーダーはメンバーの生産性向上を支援し、個々の能力を最大限に引き出すようにアプローチしましょう。
【個人の生産性を高める手法の例】
- タスク管理の最適化:優先順位マトリクスを活用し、重要度と緊急度に基づいてタスクを4つに分類します。A(重要かつ緊急)、B(重要だが緊急でない)、C(緊急だが重要でない)、D(重要でも緊急でもない)の順に取り組みます。
- 集中力を高める工夫:集中力を維持するために、作業環境を整え、騒音を軽減したり、適切な照明を確保したりすることも有効です。25分の集中時間と5分休憩の組み合わせやパワーナップ(15〜30分程度の短い昼寝)の導入も検討しましょう。
- 時間管理の徹底:1日の始まりに、その日のタスクリストを作成します。各タスクに所要時間の見積もりを立て、優先順位をつけます。会議や打ち合わせの時間は効率的に管理し、不要な延長を避けます。
- 生産性阻害要因の特定と排除:1週間の業務を記録して振り返り、生産性を低下させている要因を洗い出します。頻繁な割り込みなど、特定された阻害要因に対して具体的な対策を立てます。
- ワークライフバランスの確立:仕事とプライベートの境界を明確にします。勤務時間外の業務連絡を控える、週末は仕事関連の思考を意識的に避けるなどのルールを設けます。趣味や運動の時間を優先確保し、リフレッシュすることも大切です。
高い生産性を維持するには、心身の健康も欠かせません。ストレスマネジメントやセルフケアにも気を配り、バランスのとれたライフスタイルを築くことが重要です。
3-6. 業務の標準化とIT化で属人性を排除する
6つめの方法は「業務の標準化とIT化で属人性を排除する」です。
属人化された業務プロセスは、生産性向上の大きな障害となります。業務プロセスを可視化し、無駄を削減するとともに、ITツールの導入により業務の自動化・効率化を図ることが求められます。
【業務の標準化とIT化の進め方】
- 業務プロセスの可視化:現場の業務プロセスを詳細に分析し、フローチャートなどで可視化します。無駄や非効率な部分を特定し、改善のポイントを明確にします。
- 最適な手法の標準化:効率的な業務プロセスをベストプラクティス(最も効果的で優れた実践方法)として確立し、社内で共有します。これらの手法をもとにマニュアルを整備し、全社的な標準化を進めます。
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進:単なるIT化にとどまらず、デジタル技術を活用した業務プロセスの抜本的な改革に取り組みます。経営戦略とIT戦略の連動を図り、組織全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します。
なお、「どこから着手してよいか、わからない」という場合には、中小企業DX研究所までご相談ください。
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3-7. 従業員エンゲージメントを高める職場環境を整備する
7つめの方法は「従業員エンゲージメントを高める職場環境を整備する」です。
従業員エンゲージメントは、生産性向上の重要な要素です。
従業員が「やりがい」を感じて仕事に熱中できる職場は、生産性が高くなります。
【従業員エンゲージメントを高める施策】
- 公正な評価制度の導入:成果と貢献度に基づく公正な評価制度を導入します。透明性の高い評価プロセスを確立し、従業員の納得感を高めます。適切な報酬体系との連動も重要です。
- 能力開発の支援:従業員の能力開発を積極的に支援します。研修制度の充実や、自己啓発の支援など、継続的な学習の機会を提供します。キャリアパスの明確化も欠かせません。
- ワークライフバランスの推進:柔軟な働き方を推進し、ワークライフバランスの実現を支援します。フレックスタイム制やリモートワークの導入、有給休暇の取得促進など、多様な施策を展開します。
- 従業員の声に耳を傾ける:従業員満足度調査や提案制度など、従業員の声に耳を傾ける仕組みを整備します。現場の意見を吸い上げ、改善につなげる風土を醸成します。
- 理念の浸透と共有:経営理念や価値観を組織全体に浸透させ、従業員との共有を図ります。一人ひとりが組織の目的を理解し、自発的に行動できる環境を作ります。
従業員一人ひとりの価値を認め、やりがいを存分に感じられる環境を作っていきましょう。
4. 生産性の向上に取り組む際の注意点
最後に、生産性の向上に取り組む際の注意点を2つ、お伝えします。
- 生産性向上のデメリットにも注意し適切に対処する
- PDCAサイクルを回し継続的に改善していく
4-1. 生産性向上のデメリットにも注意し適切に対処する
1つめは「生産性向上のデメリットにも注意し適切に対処する」です。
生産性向上は企業にとって大きなメリットをもたらす一方で、デメリットにも注意が必要です。
生産性向上の取り組みが従業員の負担増につながったり、品質低下を招いたりするケースがあります。生産性向上のデメリットを認識し、適切に対処することが重要です。
【生産性向上のデメリットと対処法】
- 従業員の負担増:一人あたりの業務量が増加したり、担当範囲が拡大したりする可能性があります。過度な負担とならないよう、適正な人員配置と業務分担を図ります。
- 品質の低下:効率性を重視するあまり、品質が低下するリスクがあります。品質管理の徹底と、品質を重視する組織文化の醸成が欠かせません。
- 短期的なコストの増加:生産性向上施策への投資によって、短期的にはコストが増加する可能性があります。長期的な視点を持ち、投資効果を適切に評価して、必要な投資を行いましょう。
- 変化への抵抗:生産性向上に向けた変革に対し、従業員の抵抗が生じるケースがあります。丁寧なコミュニケーションを図り、従業員の理解と協力を得ることが欠かせません。
生産性向上のメリットを最大限に享受しつつ、デメリットを最小限に抑えることができれば、企業の持続的な成長を実現できるでしょう。
4-2. PDCAサイクルを回し継続的に改善していく
2つめは「PDCAサイクルを回し継続的に改善していく」です。
生産性向上は地道な改善の積み重ねが必要です。
計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のプロセスを着実に進め、生産性向上の取り組みを前進させていきましょう。
【生産性向上に向けたPDCAサイクルの回し方】
- 計画(Plan):生産性向上に向けた具体的な目標を設定します。現状分析に基づき、達成すべき数値目標を明確にします。目標達成のための施策を立案し、アクションプランを策定します。
- 実行(Do):立案した施策を実際に実行に移します。全社一丸となって取り組みながら、進捗状況を定期的にモニタリングします。必要に応じて軌道修正を行い、着実に前進させます。
- 評価(Check):施策の実施結果を評価します。目標の達成度を確認し、効果の検証を行います。うまくいった点と課題を洗い出し、改善のポイントを明確にします。
- 改善(Act):評価結果をもとに、施策の改善を図ります。課題への対応策を立案し、次のサイクルに反映させます。PDCAサイクルを繰り返し、継続的な改善を進めます。
PDCAサイクルを組織文化として定着させ、全員参加型の継続的な改善活動につなげることが、生産性向上の鍵となります。
5. まとめ
本記事では「生産性とは?」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
最初に、生産性の基礎概念として以下を解説しました。
- 生産性はインプットに対するアウトプットの割合を示す
- おもな指標として労働生産性、付加価値生産性、全要素生産性がある
- 物的生産性は生産効率、付加価値生産性は収益性の評価に適する
日本企業の生産性に関する背景として、以下をご紹介しました。
- 日本の労働生産性はOECD加盟国中31位と低水準にある
- 非効率な業務プロセスやIT化の遅れが生産性の低さの要因である
- 硬直的な組織文化や長時間労働への依存も課題となっている
企業の生産性を高める方法は以下のとおりです。
- 業務の棚卸しを行う
- 目標の明確化とKPI設定で全員の意識を合わせる
- 適材適所の人員配置と多能工化を行う
- 情報共有とコミュニケーションの活性化を図る
- 個人の生産性を高める
- 業務の標準化とIT化で属人性を排除する
- 従業員エンゲージメントを高める職場環境を整備する
生産性の向上に取り組む際の注意点として、以下をお伝えしました。
- 生産性向上のデメリットにも注意し適切に対処する
- PDCAサイクルを回し継続的に改善していく
生産性向上は企業の持続的成長に不可欠な要素です。本記事で紹介した方法を参考に、自社の状況に合わせた取り組みを実践し、競争力のある強い組織を構築していただければ幸いです。
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