
【この記事で分かること】
- 予算議会の意義
- 予算議会におけるオススメの質問テーマ
- 施政方針と予算議会の関係
皆さん、お疲れさまです!こちらは、地方行政サミット事務局です!
本日は、予算議会において、議員にオススメな質問テーマについて、具体的に4つ取り上げて、お話をさせていただこうと思います。

議員の的確な質問は、地方自治の議論を盛り上げる上で、必要不可欠なのにゃ。
予算議会とは
自治体で、2月から3月にかけて開会される議会は、「予算議会」と呼ばれます。
これは、当該議会におけるメインテーマが、来年度当初予算となるため。
来年度当初予算案はもちろんのこと、この予算に関連する条例改正をはじめとした関連議案、また当該年度の補正予算などもあわせて審議されます。



当該年度の決算見込みに基づく補正予算も踏まえて、翌年度の当初予算が組まれるのが一般的ですよね。
来年度当初予算案には、
されています。
そういった予算に込めた思いは、首長の施政方針演説を通じて議会に説明され、これを皮切りに、予算議会が始まるわけなのです。


予算議会は議員の腕の見せ所
さて、そういった性質をもつ予算議会は、地方議会議員の立場で見てみると、
「自治体の行財政運営から政策まで、幅広く問いただせる場」
ということになります。国会でも、予算委員会はあらゆることを質問できる場ということで重用されていますが、地方議会における予算議会も、これに近いニュアンスがあるかもしれません。



もっとも、国の予算委員会は、政局に利用しようという思惑が露骨に見え隠れするけどね…。
予算には、自治体運営のエッセンスが、すべて何らかの形で詰まっており、この予算議会では、さまざまなテーマでの質問ができます。
また、施政方針演説や予算編成における考え方を問うことを通じて、自治体運営全般についても問うことができるのです。
こういった、幅広い視点で質問を行うことができる予算議会は、地方議会議員にとっても、腕の見せ所になります。


良い質問をすれば、自治体の発展につながるかもしれない。
また、あるいはもし、首長と議会が緊張状態にある自治体であれば、首長に対する政治的なアクションを仕掛けることもできるかもしれない…。
いずれにせよ、地方自治体をフィールドに政治家としての活動を行う地方議会議員にとって、
この予算議会は、「政治家としての実力が試される場」
であるともいえるのです。
議員にオススメ!予算議会での質問集
予算議会とはこのようなものですので、ぜひ全国津々浦々の自治体議会で、予算に関する議論が深まってほしいな、と願っています。
しかしながら、予算は若干テクニカルな面もあったりして、なかなか質問へのハードルが高いという話は、多くの地方議会議員さんから聞こえてきます。
なので、つい予算全般ではなく、自分の得意フィールドの個別事案に質問を集中させてしまいがち…。
でも、これだと、せっかくの予算議会がもったいないですよね
そこで今回、
させていただこうと思います。
もちろん、「なぜその質問が必要・有効か」という背景や考え方も合わせてご紹介いたしますので、漫然とここから質問をコピペでとるのではなく、ぜひ質問の背景にある制度などについても理解を深めていただければ幸いです。
【質問①】今回の目玉施策、財源はどこから用意したのか
どこの自治体でも、首長は来年度予算の「目玉」として、大きな施策・事業を打ち出そうとしてきます。
都市部であれば子ども・子育て・教育関係、また地方部であれば人口増や地域活性化などで大きな目玉政策が打たれることが一般的ですが、当然、そういった新たな施策を打つためには、財源が必要となります。
その財源は、果たしてどこから捻出したのか。
税収をはじめとした歳入増?
今年の地方財政計画は、一般財源総額の伸びが示されているけど、これは現実的にはほとんどが人件費や物価高対応に喰われてしまうので、自由に使える一般財源はほぼ用意されていないはず…。


もしそうだとしたら、増額となっている一方で減額となっている事業、見直しを行った事業もあるはず。それらはしっかりと事業見直しについての説明責任を果たしているといえるのか…?
「目玉事業」の中身ではなく、その財源を問うことは、一般的な議員の質問との差別化も図れますし、また財政運営に関する質問へつなぐことができます。



事業の中身は、いちいち議員が質問しなくとも、首長が会見とかで嬉々として説明しているだろうから、わざわざ議会で改めて問う必要はないのにゃ。
この「目玉施策の財源論」、予算議会…特に代表質問等においては非常にオススメです。
【質問②】今後の財政計画はどうなっているのか
自治体は「予算の単年度主義」がとられていますので、基本的に予算議会で審議されるのは、翌年度当初予算案のみです。
一方で、自治体運営には一定の継続性が求められますので、一度開始した事業は、後年度も引き続き実施することが前提となり、
ある意味において新年度予算における新規事業は、後年度の財政運営も拘束する
ことになります。
また、投資的事業の実施に際して、地方債を活用すると、当然、後年度には公債費が発生します。
なので、予算議会においては、今回の予算編成を踏まえた上で、後年度の財政運営がどのような見通しになっているかについて、見解を求めるのも、建設的な議論が期待できます。
堅実な財政運営を行っていたり、財政運営に危機感があったりする自治体の場合は、当初予算案とあわせて、5~10年程度先までの財政計画(財政収支見通し)を作成して議会に示し、今後の財政運営の見通しも合わせて説明していたりします。
一方、
財政運営に対する感度の低い自治体では、この財政計画が作られておらず、「行き当たりばったり」で予算編成を行っていたりする
のも事実。
特に、子ども・子育て関係で極端な給付系施策を打っている自治体や、大型ハード事業を推進している自治体で、この財政運営の見通しが示されていない自治体は、かなりリスキーだと言わざるを得ません。



これ、事務局長はどこか具体的な自治体のことを念頭に置いているのかにゃん?



それは言わないお約束、だよ。
こういった自治体の議員さんは、ぜひ今後の財政運営・財政計画について、首長に鋭く迫っていただきたいと思います。
【質問③】人手不足への対応策は
予算議会は「予算」がテーマになっている議会ではありますが、職員の定員や採用計画について質問することも可能です。
というのも、多くの場合、予算議会において組織・定員関係の条例案があわせて上程されているため。
また、予算には人件費が計上されてもいますので、この「人件費」の視点から質問していくことも可能です。
昨今、役所のみならず、さまざまな業種で、人手不足が叫ばれています。
とりわけ自治体の場合、教員や保育士、保健師、技術職などではその傾向が顕著に出ており、「人を増やしたくても増やせない」といった状況に陥っていたりしがちです。


この人手不足に対して、漫然と職員募集をかけているだけでなんとかしようとしているのか。職員を新たに増やすための取組はしているのか。
あるいは、視点を変えると、職員数の増が今後見込めないことを前提に、自治体の業務を減らすための工夫はしているのか。
たとえば、DXの積極導入などを通じて、人手が少なくなっても仕事が回るような改善の取組は検討されているのか。それらにお金がかかるとすれば、財源は確保できているのか。



この流れだと、デジタル活用推進事業債の議論もできそうですよね。


こういった視点で、人手不足への対応策を質すことも、予算議会の議論を骨太なものにしていく上で効果的でしょう。
【質問④】施政方針演説に触れられていない取組への見解
予算議会の冒頭で首長からなされる施政方針演説。これは、「当初予算案の提案理由説明」といった要素を持ち、さまざまな来年度予算における取組が紹介されています。


一方で、施政方針演説は、一般的な提案理由説明とは異なり、首長の政治的なメッセージを込めることが許容される場でもあります。
なので、特に力を込めて取り組みたい項目に、たくさんの言葉を詰め込むことができますし…逆に、予算に計上されているものの、政治家として関心の薄い項目であれば、演説で触れないこともまた、許容されます。
そう、
施政方針演説は、首長の「自治体運営における濃淡」が、露骨なほどに強く出る
のです。
それを踏まえた上で注目したいのが、「施政方針演説において触れられていない項目」。
施政方針演説について触れられていない項目は、
- 予算に計上されているけれど、自分には関心のない項目
- 住民の関心や世論の関心はあるけれど、自分には関心のない項目
- 世論や議会との間で争点化されており、できれば触れてほしくない項目
のいずれかに分類されます。
たとえば、子ども・子育てに関心が全振りされていて、ハード事業やインフラ整備への関心が薄い首長。
地元のスポーツチームや選手が大きな成果し、地元経済界は大盛り上がりなのに、自分の関心がスポーツにないから、その話題に冷めた目を向ける首長。
いわゆる「炎上案件」を抱えており、議会でその議論を極力避けたい首長…。



絶賛炎上中の兵庫県とか、典型的なこのパターンにゃね…


こういった首長に対して、



「施政方針演説に○○についての言及がないが、そういった取組を軽視しているのではないか」
と迫ることは、行政運営を政治家のわがままに任せるのではなく、議会や住民の意思も取り込みながら進めさせる上で、有効なアプローチになるでしょう。
まとめ
以上、本日は、予算議会において地方議会議員がどのような質問をするのがオススメか、いくつかの視点からテーマをご紹介させていただきました。
予算議会は来年度の自治体運営を決める非常に重要な場である上に、あらゆるテーマについて質問をすることが可能になる、議員にとっての腕の見せ所です。
この議会で中身のある質問をすれば、より自治体運営は良いものへと進化していきますし、逆に首長と議会が対立構造にあるような自治体であれば、首長を政治的に追い込むことができるチャンスにもなります。
一方で、そういった場であるがゆえに、中身のない質問を繰り返して時間を浪費したり、職員に無意味な負担がかかったりするのは避けたいところ。
ぜひ、この予算議会を通じて、各自治体でさまざまな論戦を尽くし、まちが良くなるための政策的な議論が進みますように!