
【この記事で分かること】
- 地方財政対策と地方財政計画の違い
- 地方財政計画はそもそも何なのか
- 地方財政対策とはどういった中身なのか
皆さん、お疲れさまです!こちらは、地方行政サミット事務局です!
本日は、「地方財政対策と地方財政計画の違い」について、お話をさせていただこうと思います。

「対策」と「計画」と2文字しか違わないけど、両者にはちゃんとした違うがあるのにゃ。
ああああ「地方財政対策」と「地方財政計画」
予算編成時期に、自治体の財政課職員が、総務省自治財政局の情報を調べていると、
地方財政対策
と
地方財政計画
と、よく似た2つの名前の資料があることに気づきます。
前者の地方財政対策は、12月下旬に、国の予算案と合わせて総務省が示す資料。そして、地方財政計画は、翌年1月末~2月上旬ごろに示される資料です。
名前もよく似ていますし、何より中身も酷似しています。
この
「地方財政対策」と「地方財政計画」は、いったい何が違う
のでしょうか。
「地方財政計画」とは
まずそもそもとして、「地方財政計画」とは何かをお話ししようと思います。
「地方財政計画」は、地方交付税法第7条の規定に基づき作成される地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類で、 国会に提出するとともに、一般に公表されるもの
です。
地方交付税法の条文を見てみましょう。
地方交付税法(抄)
(歳入歳出総額の見込額の提出及び公表の義務)
第七条 内閣は、毎年度左に掲げる事項を記載した翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類を作成し、これを国会に提出するとともに、一般に公表しなければならない。
一 地方団体の歳入総額の見込額及び左の各号に掲げるその内訳
イ 各税目ごとの課税標準額、税率、調定見込額及び徴収見込額
ロ 使用料及び手数料
ハ 起債額
ニ 国庫支出金
ホ 雑収入
二 地方団体の歳出総額の見込額及び左の各号に掲げるその内訳
イ 歳出の種類ごとの総額及び前年度に対する増減額
ロ 国庫支出金に基く経費の総額
ハ 地方債の利子及び元金償還金
この、地方交付税法第7条の規定に基づいて作成されるものが、地方財政計画です。
この地方財政計画がなぜ地方交付税法で定められているかというと、詳細は長くなるので割愛しますが、端的に言うと
から。
なので、毎年度、地方交付税法の改正案の審議、そして令和7年度予算案の審議に際して、この地方財政計画は重要な役割を果たすわけです。
国の予算とも関係する地方財政計画
そして、この地方財政計画は、地方だけで完結するわけではなく、国の予算とも関係してきます。
なぜなら、
地方の財政負担は、国の予算と連動する
から。
たとえば、生活保護扶助費を考えてみましょう。
生活保護扶助費は、皆さんご存じのように、「国庫負担3/4、地方負担1/4」という財源スキームになっています。
そして、この「国庫負担3/4」で計上される国の予算の金額と、「地方負担1/4」で計上される地方財政計画上の地方負担額とは、整合性が取れるようになっています。
従って、地方財政計画を完成させるためには、国の予算案の数値が固まり切っている必要があるのです。
地方財政計画の「ざっくり版」が地方財政対策
しかし、国が予算案を確定させる12月下旬には、国の予算の細部は固まり切っていませんし、また国の予算と地方財政計画を精緻に一致させるためには一定の作業時間が必要になります。
一方で、地方自治体の側からすると、国が示す地方財政の考え方が早い時期に一定程度示されないと、自分たちの予算編成がおぼつかなくなってしまいます。
そこで、12月下旬ごろに、現時点で固まっている地方財政計画の「ざっくりとした姿」を地方に示すとともに、地方交付税や臨時財政対策債の総額や、地方向けの財政措置などについて情報提供する必要があります。
その役割を果たすのが「地方財政対策」なのです。
地方財政対策では、
- おおむね億円単位の地方財政計画の姿
- 入口・出口ベースの交付税総額
- 地方向けの財政措置の概要
が示されるとともに、これと合わせて
- 地方債計画
- 地方税収入見込額(未定稿)
も公表され、これらを組み合わせて参考にしながら、地方自治体は来年度の予算編成を行うということになるのです。



この「地方向けの財政措置の概要」、「PRペーパー」とも呼ばれていて、自治体の予算編成作業で非常に重要な役割を果たします。



これは12月中に示してもらわないと、自治体的には大変困ってしまうのにゃ。



令和7年度地方財政対策だと、「デジタル活用推進事業債」もこのタイミングで公表されているね。


まとめ
以上、本日は地方財政対策と地方財政計画の関係性をお話しさせていただきました。
一連の話をまとめると、
- 12月下旬ごろに、億円単位の概数+地財措置の概要をまとめた「地方財政計画」を公表
- 1月中に、細かい数値も含めて、国の予算と地方財政計画の数値が合うように計数整理
- その結果を、1月下旬~2月上旬に、「地方財政計画」として公表し、地方交付税法の規定に基づいて国会に提出
このような流れになっているわけです。
つまり、
というような理解でいれば、おおむね間違いはないでしょう。
「地方財政対策」と「地方財政計画」は、数値の細かさで差がありますが、多くの場合、この言葉を口にした人が頭の中に描いているものは、ほぼ同じです。
なので、「地方財政対策」と「地方財政計画」の違いに、そこまで厳格にこだわらなくて良いでしょう。
ただ、たとえば12月下旬に地方財政の全体像について語るときに「地方財政計画」という言葉を使わず、ちゃんと「地方財政対策」という言葉を言えていると、「あ、この人は分かっている人だな」というふうになります。
なので、ある意味、これら両者の違いを正確に理解してしゃべれる人は、地方財政リテラシーが高い人、というふうにはなるかもしれませんね。