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兵庫県で話題の「百条委員会」って何?偽証には刑事罰もあるの?

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【この記事で分かること】

  • 百条委員会とは何か
  • 百条委員会における刑事罰の重み
  • 兵庫県知事問題における百条委員会の取組
  • 福島県国見町における百条委員会の取組

皆さん、お疲れさまです!こちらは、地方行政サミット事務局です!

本日は、兵庫県はじめ、地方自治界隈で最近よく聞く「百条委員会」について取り上げて、お話をさせていただこうと思います。

にゃん子

非常に厳格な委員会なのに、実は意外と正しく理解されていないにゃ。

目次

そもそも百条委員会とは

まずそもそも、百条委員会とは何なのかについてお話しいたします。

百条委員会=地方自治法第100条

百条委員会とは、地方公共団体の議会が、議決に基づいて設置し、調査権を行使して地方団体の事務に関する調査を行う特別委員会

のことです。

この「調査権」の根拠が、地方自治法に置かれていることから、「百条委員会」と呼ばれています。

地方自治法の条文を見てみましょう。

第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。

この条文が百条委員会の設置根拠になっています。

百条委員会での虚偽答弁等には刑事罰が科される

そして、百条委員会には、他の議会の委員会とは決定的に大きく違うところがあります。

それは何かというと、

百条委員会において、正当な理由なく出頭しなかったり証言を拒んだり、あるいは虚偽の証言をした場合は、刑事罰が科される

一般的な議会において、虚偽の答弁をしたり答弁拒否をしたりしても、政治的責任こそ厳しく問われるものの刑事罰に至るような話にはなりません。

しかし、ことこの百条委員会については、不用意な対応をすると刑事罰まであり得るという点において、非常に重たいものになっています。

そして、

不誠実な対応に対して刑事罰が科されるほど厳しい場所として設定することにより、議会の調査権に実効性を持たせている

ということが言えるでしょう。

こちらも、地方自治法の関連条文を見てみましょう。

第百条
2 民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。ただし、過料、罰金、拘留又は勾引に関する規定は、この限りでない。

3 第一項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき又は証言を拒んだときは、六箇月以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する。

7 第二項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを三箇月以上五年以下の禁錮に処する。

なお、第100条第2項において、「民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定を準用する」という定めがあり、一連の手続きは民事訴訟を参考に設計されています。

証人尋問に先立ち、「良心に従って、何事も包み隠さず、また付け加えることなく、真実を述べることを誓う」旨の宣誓が行われますが、これも多くの裁判所における証人尋問の冒頭で行われている光景です。

れびん

このあたり、兵庫県の百条委員会の中継で見たことがある人も多そうですね。

兵庫県における百条委員会の事例に学ぶ

それでは、具体的な百条委員会の事例として、兵庫県のものをとりあげてみましょう。

にゃん子

兵庫県知事にかかわる一連の問題は、地方自治制度や選挙制度を議論する上で、非常に重要な教材になっている面もあるにゃ。

れびん

県民や県職員にとっては、「教材になっている」では済まないくらい、相当な苦労がありそうだけどね…。

みらい事務局長

知事古巣の総務省は、地方自治制度を所管しているけど、かなり複雑な思いで見ていると聞いてるよ…。

百条委員会の名称は「文書問題調査特別委員会」

兵庫県において、元西播磨県民局長の内部告発文書をきっかけに起こった、知事のパワハラやおねだり、さらには補助金キックバックなどの疑惑が明らかになった一連の問題。

また、この内部告発文書を内部告発として扱わなかった県人事当局(総務部職員局)の対応も大きな問題となりました。

兵庫県議会は、これら一連の問題について、議会として調査すべく、百条委員会を設置するわけですが、この百条委員会は、

文書問題調査特別委員会

と名付けられます。

アンケート調査と証人尋問で調査結果を積み上げていく

兵庫県における百条委員会「文書問題調査特別委員会」は、2024年12月25日時点において、延べ15回開催されています。

委員会の中には、議員から選ばれた委員だけで議論をしているときもあれば、職員や知事に対する証人尋問を行っているときもあります。

また、この百条委員会は、自らが職員に対するアンケート調査を行い、これに基づいて職員への証人尋問を構成していったりもしていました。

アンケートは匿名で行われたものであり、複数回答が行われたことも相まって、そこに正当性を欠くのではないかといった意見もあるようでしたが、百条委員会は単にアンケートのみをもって証拠とするのではなく、アンケートに書かれた内容を、関係職員に対する証人尋問で補強することにより、証拠としての価値を高めるようにしていました。

せりか

このあたりの進め方は上手いなあ…と思います。

知事への証人尋問を実施も…ほぼゼロ回答

また、百条委員会は、今回の疑惑の「本丸」である斎藤元彦兵庫県知事も招致し、証人尋問を行っています。

しかし、斎藤知事は、あらゆる問いに対して

  • 「記憶がない」
  • 「そのような認識はない」
  • 「自分としては、〜が大事だと思っている」

と、答弁をはぐらかすようなことを繰り返しており、なかなか調査を通じて事実の核心に迫れないような状況が続いています。

虚偽答弁には刑事告発の「義務」あり

一方で、この百条委員会においては、斎藤知事以外にも、元総務部長や元副知事など、斎藤知事の側近として意思決定に関与した幹部職員も証人尋問を受けていますが、そうした他の証人と斎藤知事との間で、証言に食い違いが出ているようなシチュエーションも多々見られます。

これはすなわち、

「証人の誰かが虚偽の証言をした可能性がある」

ということ。

しかし、冒頭に見たように、

百条委員会において、虚偽の証言をすると刑事罰が科される

ということになっています。

議会は、百条委員会において虚偽の答弁を認めたときは、刑事告発をしなければならない旨が、地方自治法に定められています。

第百条

9 議会は、選挙人その他の関係人が、第三項又は第七項の罪を犯したものと認めるときは、告発しなければならない。但し、虚偽の陳述をした選挙え人その他の関係人が、議会の調査が終了した旨の議決がある前に自白したときは、告発しないことができる。

この刑事告発については、「しなければならない」という義務規定になっています。ですので、虚偽答弁を認めた場合は、刑事告発が義務づけられている、ということになります。

この「刑事罰」こそが百条委員会の伝家の宝刀ではあるのですが、一方で手をかけてしまった以上は必ず抜かなければなりません。

虚偽答弁があれば、そこを糾弾して、刑事告発する…これこそが百条委員会の責務であり、兵庫県議会の覚悟が問われます。

もしここで日和ってしまった場合、地方自治法の趣旨の観点から、強く批判されることになるでしょう。

にゃん子

一般職の職員が百条委員会の虚偽証言等で禁錮以上の刑になった場合、地方公務員法の規定により、欠格条項に該当して失職してしまうにゃ。

せりか

兵庫県では人事課の機密情報漏えい事案でも、同じことが懸念されていますね。

みらい事務局長

総務部門の職員が欠格条項該当のおそれって…どんな組織ガバナンスになってるんだと問われるところだよね…。

にゃん子

どうやら兵庫県の組織ガバナンス、相当やばいことになっているみたいにゃ…

福島県国見町では企業版ふるさと納税で百条委員会が

百条委員会というと、兵庫県の問題が非常に大きく取り上げられがちですが、地方自治界隈では、福島県国見町における企業版ふるさと納税にかかる百条委員会も注目度が大きいです。

これは、国見町において、DMMグループが行った企業版ふるさと納税による寄附が、結局不透明な契約を通じて関連会社からキックバックされており、不正な節税を行ったという事案です。

にゃん子

詳細は「企業版ふるさと納税」の別記事で説明しているので、ぜひ合わせて見てほしいにゃ。

この件は、企業版ふるさと納税を活用して実施しようとした事業が、高規格救急車の開発であったことから、「高規格救急自動車研究開発事業事務調査特別委員会」と名付けられて、調査が行われ、報告書がとりまとめられています。

議会はこの調査報告書を議会で議決するに際し、時の引地町長に「速やかな政治的決断を」と迫っておりますが、この時点では辞職はせず。

しかしその後行われた町長選挙で、この問題の当事者であった引地町長は落選することになります。

百条委員会での調査が、首長の政治責任を強く問うた結果であったと言えるでしょう。

まとめ

以上、本日は、兵庫県で話題の「百条委員会」について、そもそも何なのかという話を取り上げるとともに、百条委員会が立ち上がった事例を、兵庫県以外も含めてご紹介いたしました。

百条委員会が他の議会の委員会と決定的に違うのが、「証言拒否や虚偽答弁に刑事罰が科される」ということ。この刑事罰の存在が、百条委員会の調査権に強い実効性を持たせており、非常に厳格で格式高い委員会となるように設計されています。

福島県国見町では、企業版ふるさと納税を使った疑惑が百条委員会で調査され、調査結果が明らかにされた後、最終的に町長は選挙で敗れることとなりました。

また、百条委員会においては、虚偽答弁が発覚した場合、議会側には「刑事告発の義務」が課されています。

それだけ影響力の大きい百条委員会です。

地方自治制度の要である地方議会に与えられた、法に基づく強力な権限です。軽く見たり、おもちゃにしたりすることが許されるものでは、決してありません。

問う側も、問われる側も、見守る側も。この百条委員会の重みを、強く強く噛みしめて、向き合うことが必要だと思います。

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